(創作)

(!)中二的思考恋愛事情。

決まって周りの奴等は彼に対して軽蔑、或いは憐憫の意味を込めたような表情で突き刺さるような視線を向けながら言葉を吐き出した。彼自身は己がそういう人間だとは認識しておらず幾ら他人に言われようが特別気に病んだこともというより気に留めたことすらなかった。自分に対する相手の評価など心底どうでも良かったし何より自分自身に興味がなかった。他人が幾ら過大評価しようが過小評価しようが自分には全く関係の無い事だし何が変わる訳でもない。考えることでさえが億劫で全てから目を背け目蓋を落とした。心を鎖したのではない己が面倒だと思うことはしたくない。と至って単純な理由で其の怠惰の念に本能的に従いのらりくらりと今まで逃げ果せて来た。最初は少しばかり罪悪感からの抵抗があったものの慣性が付いたのかなんなのかもう慣れてしまい平気な面をして他人を踏み躙りながら其れを足台にして隘路を辿る事無く人生を闊歩する様は迚も快感で仕方がなかった。いつの日だったか昔読んでた小説の一文に、『人生は快楽だ』という言葉が脳裏に生々しく其の日の侭生々しく残っていた。快楽無くして何が人生だというのだろう。何が人生だというのだろう。詰り快楽というものは生きる糧だ。快楽無くして人間は生きられない。良く口中の粘膜に刺激を与える第一級の快楽と言える。というが、其れは食べ物だけではない。『人の不幸は蜜の味』という言葉を聞いたことあるだろうか他人の不幸は何よりも甘美であれ程までの御馳走は無いのだろう。口腔内で染み出した唾液と其の蜜を攪拌させ舌で甘受し喉へと通すその恐ろしい程の甘さに噎せたとしても無理矢理にでも嚥下させ腹の中でじっくりと料理する。思わず口角が上がった、膝が笑った、肩が震えた、腹の奥のもっと奥のほうが疼いて疼いて疼いて疼いて、仕方がない。震えるほどの快感。それ等を食い物にしながら面白可笑しく此の短い余生を謳歌するのだろう。






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「で、之は何が言いたかったの?」
閑散とした質素で必要最低限の家具しか置かれていない殺風景な個室に二十歳程の男二人が片方の男は一枚の紙を片手に持ちながら眉間を抑え何やら訝しげな表情で目の前に居る男へと低く問いかけた。問われた男は無表情のまま其の男を見下ろしながら先程迄開かれることのなかった口をゆっくりと開く。
「…、何も意味はありませんよ。唯、…どうでも良かったんです、あの子も。自分も。だけどどうでもいいとか言ってた割には俺は自分しか考えてなくて、…逃げました。逃げたんです。俺はあの子は好きだったけどどうしても愛せなかった、それだけなんです。考えてる内に段々面倒になって、連絡の回数も減って、少し気持ちが離れたらまた、元通りになるものだと思ってたら気持ちは冷めていくばかりだった、…もう、戻れない、って、思ってたら、俺は何時の間にかあの子の前から姿を消してて、「あー、逃げたんだなあ、」って思ったら自然と気持ちが軽くなってたんですよ、其れがどうしようもなく、嫌になって何時の間にかこんなの書いてて、」
長々とした詞の羅列を途切れ途切れに発していけば自然と苦笑を零してしまった。錆びれたパイプ椅子へと座席した男の手に握られた其の紙っぺらは男の怠惰と、其れから織り成された後悔とも言える念の捌け口であった。力無く其れを解放し机上へと舞落とせば何ども脱色を繰り返して傷んだ髪の毛を掻き揚げ深々と溜息を漏らす。
「御前がどう思おうと勝手だけどさ、」
と吐息と共に零しながら真直ぐに死んだような目をした濁った眼(まなこ)を見据え、低く、それでいて重い声色で静かに男の鼓膜を震わせた。
「仮にも恋人の前で言うことかってーの。ま、別にアンタってそーいう人だっていうのはしってるけどさあ。なあ、其れで、何?、最低、とでも俺に罵って欲しい訳?、それともなに、御前は悪くないよとでも慰めの言葉が欲しかった?、俺はアンタが望むのならなんだって、あげる。あげるよ。ああ、でもどうでもいいんだっけ。何もかもどうでもいいんだよね、…、自分以外、さあ。逃げないでって言っても勝手に逃げてるとか、さあ、止めてよ、寂しいじゃん。これ以上御前に依存したら勢い余ってお前のこと殺しちゃいそうで怖い、お願いだから、さあ。愛さなくてもいい、好きじゃなくてもいい。俺をアンタの瞳に映してさえしてうれればそれでいいんだ、俺はアンタのこと別に愛してるとかそういうのじゃないしさあ。俺もそれなりにアンタがどうでもいいんだ、だって依存する人間なんて誰でも良かったんだ、誰でも、…誰でも。」
そう言って両腕を伸ばした。絹のような肌理細かい肌に触れて震える指先で男の体温を感受し、口許を緩めた。
「…、貴方は可笑しいよ、俺に依存してどうなるの、」


頬から滑るように落ちた男の手が喉へと爪を立てた。



(――答えなど必要なかった。)


…なにこれ?、何が書きたかったんだ。


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