あおくろ前提きあお。

(!)ちょっくらぬるい。

「なあんで黒子っちはアンタがいいんスかね」
「……ッ、ぐ、う」
ぐちゅ。とか耳を塞ぎたくなるような水音が響くと同時に本来なら挿れる用途を持ち得ていない場所に質量が奥へと埋まって無理矢理声が押し出された。その声を出すのも聞くのも嫌で必死に下唇に歯を立て声を堪えていたのだが力みすぎて元から乾いた唇の皮膚は容易く破れて血と唾液が混ざった液がつう、と顎を伝っていって柔らかくしわくちゃなシーツに歪な染みを滲ませた。今すぐにでも舌を噛んで死んでしまいたい衝動に駆られて悔しげに歯を食い縛るがその考えを見透かすようにその上で嘲笑うかのように結合部分を強く擦られて最初は激痛しか感じ無かったのに身体はその痛みから逃げる為か快感を拾うことを覚えてしまった。羞恥を超える屈辱が悉く己の自尊心やプライドも全てを食い荒らし絶望の淵へと叩き落としていって。このまま壊れてしまった方が楽になれるのではないか、と錯覚した。するとそこに追い打ちを掛けるように容赦無い嘲笑と揶揄の声を浴びせられ一層眉間に皺を寄せながら細く鋭利な視線を送った。

「――ハハ、気持ちいーんスか、青峰っち。声我慢してたって判るっスよ。すっげー奮えてるし、…、後、さっきからアンタのココ、結構締め付け半端ないんスよね、」
「る、せ……、喋ん、な…ッ、」
挿入した質量で拡がった尻の皺を人差し指でするりとなぜてやれば余程驚いたのか四肢が面白い位に大きく跳ねた。びくびくと身体が震えてその反応が此方にも快感を寄越すからぞくりと腰から脳に信号が昇って直ぐに脳味噌が酸欠になったみたいにくらくらした。ふと青年の体制を改めて見下ろすと腕と膝を床に着かせながら尻を此方に向けて顔は布団に押し付けて嬌声を堪えているようだった。くぐもって聞こえる嬌声は正直色っぽく無いし艶かしくも何ともない。といっても喘がれても萎えるだけだったから此方としては好都合だったかもしれない。彼を好きな訳では無いのだから。敢えて目の前に組み敷いた男を見ず脳裏に映るある青年を思い出していた。そして、重ねた。この男のように肌は浅黒く何処もかしこも褐色で比較的健康的な色はしていないし手触りもこんなに水分が無くかさかさしていない。背だって小さいし筋肉も筋も薄くて細い。骨だって少し力を入れただけでも折れてしまいそうな、それだけ考えて息を、飲んだ。此だけ好意を向ける彼だからこそ青年の気持ち等判っていた。己の思いはけして報われるものではないことも判っていた。もう元の関係には戻れないかもしれない。それでもよかった。ただ、欲しかった。ただ、ただ。隣に居たかった、それだけなのに。

「ね、何でアンタな訳?、青峰っちなんかよりオレの方が黒子っちの事解ってあげられるのに。光?影?アンタが黒子っちの光?、オレの下でこんなにぐっちゃぐちゃになってるアンタが?、笑えない冗談っスね。」
一気に乱暴に中を掻いてやるとまた身体を震わせて歓喜を表すものだから此方にまで快感が伝わってきて興奮に喉が鳴った。べろりと渇いた唇を舐めて舌舐めずりをすればはくはくと虫の息同然の彼の粟立った項へと鼻を寄せてそのまま寝る前の子供に本を読んであげるような、そんな穏やかな声色で、

「――ねえ、オレに頂戴、黒子っち。」

甘ったるく、蕩けていきそうな声で耳許へそっと囁く。すると先程まで消え失せていた眼光が小さく光を点し、群青の綺麗な二つ目が細められ此方を射ぬいた。その瞳に反射して映った己の姿をぼんやり眺めて丸っきり変わってしまった目付きや形相に自虐的に口許を歪めて顔を逸らした。一時的に止めていた律動を再開させれば鋭く、反抗的な目を向けながら何か言いたげに上唇と下唇を不自然に動かしている。正直限界も近かった為か全て無視してひたすらに犯した。嬌声かも嗚咽かも分からない悲鳴を喉から押し出しながら未だに酸素を求める魚の如くぱくぱくと口を開閉させる彼に苛つきと若干の焦りを覚えて奥歯を噛み締めた。言うな言うなと訴える様に腰を押し付け、有無言わさずその声渇れるようにと奥へ奥へと穿って追い詰めてやった。こんなことが間違いだって誰が教えてくれただろう誰が正してくれただろう。それほどまでに愚かな自分はそんなことも判らずに、ただただ堕落していくだけなのだろうか。ちかちかしたと白が視界に舞って目の奥が熱くなるのを感じた。はくはくとインターバルを続けながら、力強くその言葉が吐かれた。

「……や、らねえよ、テツ…ッ、……は、オレ、の……モン、ッ…だ!」

ぎち、と筋肉と骨が軋む音がして小さく呻いた後ほぼ二人同時に果てた。どくりと流れ出る白濁を惜し気もなく注ぎ込み言ってしまえば腰が大分軽くなった。他人と身体を重ねる事は初めてでは無いが初めて感じる寂寥や虚しさに目蓋を伏せ、息を付いた。汗ばんだ額を前髪ごと拭ってぽたぽたと己の頬を伝って落ちる生暖かくてしょっぱい液体の行方を呆然と眺めた。真っ白なシーツに溶けていくそれを無心で目にしながら隻手で目頭を押さえ嗚咽を殺した。

「……、何で手前が泣くんだよ、」

呆けた顔で此方を見据える彼の宣言が頭の中で何度も、何度も繰り返されてもう自分が何で泣いているのかも何でこんなことをしたのかも思い出せない。でももうこの胸に空いた傷は治らないのだろう。治ったとしてもそれは永遠に残るものなのだろう。だけど、オレが一つ言えることは、

(キミが欲しかった、ただそれだけ。)



.
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -