ろくじょうとおりはら、

(!)一部暴力表現有、


「アンタが折原臨也?、」
背後からの呼び止めの声に振り返れば突然胸倉を掴まれ何処かへと引っ張り込まれた。


人混みから離れ連れてこられた場所は建物と建物の間に位置する場所薄暗い路地裏だった。足元に散らばる錆びれた部品だったものや煙草、見覚えのあるファーストフード店の袋等を見ると異臭はしないものの何処か湿っぽくて不衛生さが窺える。周囲を確認している内に背中を壁に思い切り叩き付けられ其処からびりびりと走る強烈な痛みに小さく呻けば思わず器官が詰り噎せてしまった。少々乱れた呼吸を整え顔を上げ、目の前の青年の顔を視界に捉えては、有ろう事か実に愉しげに口許を歪め弧を描いた。青年はそれを目にすると心底気味悪げに顔を顰め噛み付かんばかりの鋭利な視線を送る。此の儘睨み合いが続けられのかと思いきや先に沈黙を破ったのは男の方で厭らしく歪めた唇を開いた。
「―――これはこれは、To羅丸の総長、六条千景君じゃないか。」
ぴくり、と六条の片眉が上がった。その反応を見ると一層笑みを深くさせ言葉を続ける。
「ずっと俺を付けてたみたいだけど、…何か俺に用かな?、」
壁に縫い付けられたままの状態で青年の顔を覗き込めば何とも胡散臭い表情で首を傾げる。すると六条は頭を上に上げ星一つ無い空を拝み静かに、口を開いた。

「俺は、女が好きだ」

如何にも場違い過ぎて予想だにしない言葉に流石の折原も表情を崩し疑問符を頭上へと浮上させては少し呆けた表情を浮かべている。そんな折原を余所に先程と同じトーン、然して落ち着いた口調で続ける。
「俺は女が好きだ、全世界の女の子を愛してるといっても過言じゃねえ。だから俺は男として彼女たちを守っていきてえし大切にしていきてえ、嫌、辷きだと心から思ってる。」
「成程、」
丁度のいいところで相槌を打った。
「―――で、その大切にすべき女を泣かせる様な下衆野郎は許せねえ、半殺しにしてでもその腐った根性を叩き直してやりたいと思ってる訳だが、」
瞳だけ男へと下ろされ帽子の下から鋭い眼光が此方を見た。
「へえ、」
それでもまだ心底興味がなさそうに相槌を打てば、「だから?、」と短く問いかけた。

「だから、」

ゆっくりと顔を下げ後ろで固く握りしめていた拳を振りかぶり其の儘男の頬へと容赦なく渾身の力で食らわせた。

「…っ、」
ぐらり。と一瞬視界が揺らぐ。途端に安定感の無くした体はぐらついて無様にも地面に落ちた。拳が頬へと到着する時間があまりにも早すぎて歯を食いしばることが出来ず口の端は勿論中まで切れてしまった。じわりと口腔内に広がる鉄の味が嫌で、唾液と一緒に地面に吐き出した。
「お寝んねにはまだはえーよ、」
酷く冷たい声色でそう告げれれば僅かに腰を落とし胸倉を掴めば無理やり立たせる。まだ脳味噌がぐらぐらして思考が回らない、視界がちかちかして気持ちが悪い。内心そう思いながら表情はあの憎たらしい笑みを浮かべ舌で血を舐めずりながら饒舌に言葉を紡ぎ始めた。
「君が女の子をどれだけ好きかはよ―――っく分かったよ、でもさあ、それで何で俺は殴られてるのかなあ、別に俺は女の子を泣かせりたりなん――、」
べらべらと話始まろうとした瞬間話の途中で片足を上げた青年は男の両足の間、股の下へと、どん。と鈍い音を立てて蹴り出した。
「巫山戯た事抜かしてんじゃねえぞ、玉潰されてえか。」
煙草を揉み消すかのようにぐりぐりと足を捻れば其処から脚を退かせ、次は舐めるかのような目線を男の顔へと集中させる。男はその煩わしい程の執拗な視線に露骨に眉根を寄せれば此方も少し視線を上げ、相手の視線と合致させた。すると、
「――男の癖に綺麗な顔してるじゃねえか、」
男の顎に手を沿わせ輪郭を人差し指で撫でれば感心したように呟いた。

ぶん投げた。
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