頬が強張って瞼が開かなくなる程寒々しい中、一人の少年は階段に縮こまり寒さに内震えながら来るであろう友人達を待ちわびていた。ふと腕時計を見てみると待ち合わせの時間より数分程経過している。寒さのせいかたった数分の遅刻でも癇癪を起こしそうに成る程腹の中はぐらぐらと煮えたぎってしまう。眉を思い切り顰蹙させ眉間に深い皺を刻み込めば舌打ち一つ鳴らして強くなっていく風に耐えるように肩を抱いて頭を埋めた。
「…………早く来いっつの」
文句一つ溢せば僅かに顔を上げて下段を見詰める。この風が原因なのか周りには人の気配すらなく聴こえるのはただただ吹き荒れる風の音くらいだ。
「タダクニー…!、」
もう帰ってしまおうかと思い始めていた時2つの影が腕を振りながら此方に走って来る。やっと来たか、とばかりに向かってくる影に目を向ければ大儀そうに立ち上がって砂埃を払う。
「悪い、待たせたな」
息せき切って来た二人の姿を見ると防寒具として着ているコートやマフラー等乱れていて大分急いできたという事実が窺えた。それを見た後だと何だか頭ごなしに怒鳴る事も出来なかった。
「…何で遅れたんだよ」
「嗚呼、ヒデノリの奴がいきなり妹のパンツを風に飛ばしてしまってな…」
「ヨシタケおま、…、それは言うなっていったじゃねーか馬鹿!、」
「馬鹿はお前だヒデノリ。つかなんで妹のパンツ御前が持ってんだ!、」
タダクニの問いに対して金髪の青年ヨシタケは見た目とは合わない鷹揚とした態度で隣にいる眼鏡を掛けた青年、ヒデノリを指差し乍平然と答える。対してヒデノリは先程まで寒さで紅潮させていた頬を真っ青にしてはヨシタケの胸元を掴んで理不尽な罵詈雑言を浴びせながらがくがくと体を揺らす。
「……そりゃ、大変だったな」
ぎゃあぎゃあと意味のない言い合いをしている二人を眺めながら一人怒りに震えていればわなわなと拳を震わせた。今すぐにでも殴り掛かっていきそうな剣幕で必死にヨシタケの肩を揺らし続けるヒデノリに近付くが何を思ったのか固く握っていた拳を開き優しくヒデノリの肩に手を乗せ柔和な微笑みを浮かべながらヒデノリを地獄の底へと落とす一言を一つ。

「今から俺の家に来ないか?、妹も帰ってるだろうな」

それから数十分後。

タダクニ宅に断末摩が響き渡ったのは言うまでもない。







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