はじめてのくえすと?オトモはいつもあみだくじ!


 読者の皆様こんにちわ。
 私は忍術学園6年い組、立花仙蔵です。決して立ばにゃ仙蔵ではありません。立ば『な』仙蔵です。そこの所をお間違いなきようお願い申し上げます。

 ・・・それはそもかくとして、かくかくしかじか―――失礼。いえ、なんでもありません。
 コホン。改めまして・・・我々―――私、立花仙蔵と、同じく忍術学園の六年生である潮江文次郎、七松小平太、中在家長次、食満留三郎、善法寺伊作―――はつい先刻、突拍子も無いやや込み入った事情から、忍術学園を離れ何故か異世界で暮らす事になってしまいました。
 ・・・猫―――オトモアイルーとして。





 「皆お待たせ!次のクエスト決めて来たよ〜!」

 我々が乱太郎、きり丸、しんべえに一通り広場を案内してもらい終えた頃に湊は戻って来た。
 こいつが今回の我々の災難の元凶、諸悪の根源、諸々の不都合の病巣、十六夜湊。
 この女は我々の同輩のくのいちで、教科や実技の成績だけは悪くは無いのだが、『貴様は一体忍術学園で6年間何を学んで来たのだこのたわけが!』・・・と言いたくなる程に、ドジで鈍臭くて間抜けで阿呆でのろまで・・・とにかく、『忍術学園のトラブルの元凶は一年は組か学園長先生か湊か』と言われている大うつけ者だ。

 「くえすと?」

 これは猫になっても暑苦しくて見苦しい文次郎。

 「ああ、ハンターのお仕事の事。忍者で言ったら忍務って所かな!」

 懐から何やら取り出して確認し始める湊。覗き込んでみるも全く読めない。
 どうやらこの世界で使われている文字は我々の世界の文字とは全く違うらしい。

 「忍務か!と、いう事は何かと戦うんだにゃッ!?」

 同じく暑苦しい留三郎。

 「何?忍務?面白そうだにゃ!私も行きたい!」

 小平太、お前は特になんにも考えてないだろう。

 「ああ、えーと・・・今回は狩猟クエスト・・・敵を倒す忍務じゃないんだよね」

 「多分途中で少なからず戦いはするんだけどね?」と言いにくそうに言葉を濁す湊に、私は察した。

 「にゃる程。どうせ間抜けのお前の事だ。強敵と戦うようにゃ重要任務は回って来んのだろう」

 私がそう言うと湊は照れくさそうに後頭部を掻きながら「流石は仙蔵さん。その通りでーす!えへへ〜」と笑う。やはりか。たわけめ。
 この世界に来た時に聞いた湊の話では、『もんすたー』とやらは強いものになると虎や熊や猪などの獣などとは比べ物にならない程、相当に強いらしい。
 『忍術学園の三大方向音痴』、『歩く火打石』、『不運女王』、『右ドジ左ドジ』・・・などなど、数々の不名誉な二つ名を恣にし、後世まで語り継がれるであろう阿呆な伝説を幾つも持つようなこの女が、そんな危険な忍務などそうやすやすと遂行出来るわけが無い。

 「やれやれ、そんにゃことだろうと思ったわ。生まれ変わっても相変わらず使えん奴という事だにゃ」
 「むぅー!仙蔵酷いよー!それでも全然大型狩猟獣や龍とかと戦ってないわけじゃないんだよ?」

 湊は私の言った事実に顔を顰め、唇を尖らせて抗議する。子供か。

 「バカタレッ!日頃の鍛錬を怠るからいつまで経っても実戦で結果が出せんのだと何度も言っただろうが!よし!今からこの丸太を抱えてオトモ広場千周だ!」
 「・・・文次郎。・・・話が・・・逸れる・・・」

 長次が鍛錬馬鹿を制した。

 「へッ!鍛錬馬鹿が!怒られてやんの!」
 「にゃんだとてめえ留三郎、喧嘩売ってんのかぁ!?」
 「本当の事を言ったまでだろうが!」
 「・・・二人とも?僕、さっきもこんにゃ時に喧嘩しにゃいでって言ったよね?」

 犬猿馬鹿共が話の腰を折って一触即発になるのを伊作が笑顔で止める。目が笑っていない。
 巻き込まれないうちに話を進めよう。

 「で、敵を倒す忍務じゃにゃいにゃらにゃんにゃんだ?」

 少しがっかりした様子ではあるが『くえすと』とやらにだいぶ興味のある様子の小平太が食い気味に促す。にゃんにゃんと聞き苦しいぞ、猫ではあるまいし。

 「採集クエストって言って、指定されたアイテム・・・ええと、品物を集めて来て納品するお仕事だよ。山菜詰みとかキノコ狩りとか鉱石採掘とか」
 「・・・にゃんだよ。それじゃあきり丸のアルバイトと大差にゃいじゃにゃいか」

 呆れる文次郎。

 「とんでもにゃい!私達が派遣される場所には凶暴にゃ恐竜・・・肉食獣や攻撃的にゃ生き物が沢山居るんですよ!」

 どこから湧いて出たのか、乱太郎が我々の話に酷く真剣な顔をして割り込んで来た。

 「そうッスよ!儲かる所にはその分危険にゃ怪物がウヨウヨ・・・。ま!オレは採取専門にゃんで戦わにゃいッスけどね!」

 胸を張ってキッパリと言い放ち「キラビートルにドラグライトにライトクリスタル・・・」と訳の分からん事を言いながら目を銭にして自分の世界へ入ってしまうきり丸。

 「ハチミツ採ってたらアオアシラが襲って来た時は怖かったよねぇ〜」

 今にも鼻から魂を出しそうな顔で震え上がるしんべえ。

 「だーかーらー!お前達はいつも引率者の指示を聞かにゃいで勝手にゃ行動ばかりするから、より危険にゃ目に遭うのだと何度言ったら・・・!」

 顔を大きくして鬼のよな形相で仰られる土井先生は、しかしまた踞ってすすり泣き出されてしまわれた。
 ・・・誰とは言わないが、一年は組はあの二人だけでもとんでもなく足手まといだというのに、普段一年は組の全員を見ていらっしゃるというだけで土井先生はお気の毒だと思うと同時に尊敬する。 

 「と、とにかく!この世界は我々の世界とはあまりにも違う。危険にゃのは決して大型のモンスターだけではにゃいし、特殊な環境で、手近づくだけで危険にゃ場所も多い。上級生・・・特にプロ忍に近いと言われるお前ら六年生にゃら大丈夫だとは思うが、忍びの三病を忘れず、決して油断するにゃよ!」

 立ち上がり、至極真面目な顔で仰られる土井先生。
 成る程。土井先生程の実力者をこうまで言わしめるとは・・・この世界に少し興味がわいて来た。
 忍者たるもの常に冷静沈着であり、如何なる状況下に於いても臨機応変な対応が出来ねばならない。
 とんでもない災難だ、冗談ではないとも思ったが、普通到底あり得ないであろうこの状況は、そういった事を鍛える為には良い機会かも知れない。
 土井先生の言葉に我々は考えを改め、とりあえず暫くは現状把握や情報収集も兼ねてクエストや交易、モンニャン隊などに積極的に参加してみようという意見で概ね一致した。
 




 「ではその『くえすと』とやらに行ってやろう。皆、準備は良いか?」

 六年一同の顔を見る。

 「おうよ!怪物だろうが妖怪だろうがギンギンにぶちのめしてやるぜ!」
 「強い敵が沢山居るって事だろ?楽しみだにゃ!いけいけどんどーん!!!」
 「・・・貴重な実戦経験に・・・にゃる」
 「よーしッ!採集だろうが狩猟だろうが俺に任せろ!」
 「異世界に来たのはただ不運ってだけじゃにゃいのかもしれにゃいね。よし!僕も頑張るよ!」

 皆私と同じくこの数奇な機会から忍びとして成長しようという結論に達したのか、やる気充分、と行った面持ちだ。
 我々忍術学園六年生の力の見せ所だ―――





 「あのぉ・・・、皆さん盛り上がってる所申し訳ないんだけど、一回のクエストに連れて行けるのってオトモ二匹・・・あ、ごごご、ごめん!!!仙蔵さん文次郎さん睨まないでッ!えーと、・・・二人までなんだよね。なので・・・」
 「「にゃに!?」」
 「にゃんだ、そうにゃのかぁー」
 「・・・確かに・・・大勢過ぎては・・・逆に危険にゃ場合もある」
 「そうだね。敵に見つかり易かったり、統制が執りづらくにゃる事もあるしね。ましてここは知らにゃい地だ。偵察も兼ねて少数で動くべきかも」
 「そうだにゃ・・・。よし!それでは私の他に後一人、湊!さあさっさと選べ!」
 「ちょっと待て!にゃんでお前が行く事が決まってる前提にゃんだ!」
 「そうだ!抜け駆けはずるいぞ仙蔵!」
 「・・・二名とも・・・湊が・・・選ぶべきだ・・・」
 「湊!行くのは私だよにゃ!?」
 「ちょッ!小平太!僕の尻尾踏んでるッ!」

 私の決定に何か不服があるのか、うるさいその他。

 「あの、重ね重ね申し訳ないんだけど、今回もう一人人員決まってるんだよね・・・」

 湊は片手でを軽く顔の前に出し、謝るような手振りをしながらチラっと横目で土井先生となにやら話しているきり丸を見る。

 「まさか決まってる一人って・・・きり丸か?」

 湊の仕草で察したらしい留三郎は「またにゃんで?」と不思議そうに問う。

 「そうだ。危険があるにゃら尚更上級生や先生方で編成すべきだろう」

 文次郎も納得いかないといった感じだ。

 「うん。そうなんだけど、きり丸って採取クエストになると凄い張り切って大型モンスターが居ようがそっちのけで凄い早さで採取して来てくれるんだよ」
「だからいつも採取はほぼきり丸に任せて、きり丸の護衛みたいな形で先生達か凄腕さんとか利吉さんとかと行くんだ」

 なんとも納得出来るような出来ないような人選ではあるが・・・だがきり丸が採取に夢中になっている姿だけはなんとなく想像出来た。適材適所というヤツだろうか。

 「で、まあきり丸とだったら同じ図書委員で勝手のわかる長次が良いかなって思ったんだけど・・・」
 「ずるいぞッ!私だってにゃん度もきり丸のアルバイト手伝っている!」
 「それにゃら俺だってッ!」

 小平太と文次郎は湊のセリフに被せるよう抗議した。
 その様子に溜め息をつきながら、湊は懐から何かを取り出す。

 「・・・ってなると思ったから、ここは公平にあみだくじで決めたいと思いまーす!」

 取り出されたのは最早お馴染みのあみだくじだった。






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