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同級生で両片思いの倉持

いつもばっちり整えてある細い眉毛が、不自然に途切れていることに気が付いた。

「あれ…、倉持、眉毛」

「あん?」

「まっ、眉毛…眉毛ないじゃん!待って、待ってお腹痛い…!」

「おいこらみょうじふざけんな!」

倉持の右側の眉尻が途中ですとんとなくなってしまっている。お手入れ中の不慮の事故だという想像はつくが、あまりに間抜けで笑わずにはいられない。

「どこのヤンキーですか!80年代ですか!」

「うるせーんだよ!ほっとけ!」

「せっかく高校から改心して眉毛伸ばしました〜って感じだったのに、すっかりヤンキー時代に逆戻りだね!」

「昔のことなんざ知らねーくせに適当なこと言ってんじゃんねーよ」

自分でも途切れてしまった眉毛が恥ずかしいのか、手で思いっきりごしごしと擦って誤魔化そうとする倉持。
いやそれ全く誤魔化せませんからね?
擦り過ぎてちょっと赤くなってしまっている。

「ああ、ちょっともう!ダメだよそんなことしたら」

「お前のせいだろうが」

手を掴んでやめさせると、不貞腐れた倉持は口を尖らせて不平を言う。

「どうせ手が滑ったとかなんとかでしょ」

「………、今朝先輩に、悪ふざけでやられた」

「えっ、作為的…?」

「………」

「………」

「…おう」

「ぶはっ」

一体どんな人なんだその人は!
やっぱり堪え切れずに吹きだすと、今度こそ本気で怒ってしまったらしい倉持に両頬をべちんと叩かれた。(一応最低限の手加減はしてあった)
もちろん倉持を笑った私が悪いので文句は言えないけど。

しかしその先輩とやら、倉持にこんなことができるなんてきっとやばい人だな。是非お近づきになりたいものだ。

「なあ、みょうじ」

「え、何?」

「お前まだちょっと笑ってんじゃねーか!」

「ごめん、だってもうツボに入っちゃって…」

笑いすぎて目に溜まった涙を拭って今度こそはと表情筋に力を入れた。
その様子を見ていた倉持は心底幻滅したぜって顔をしているけど、知らない振り。

「で、何言おうとしてたの?」

「…これ、応急処置できるもん持ってねーの」

「応急処置?絆創膏とか?」

「それだと目立つだろ。あれだよ、ほら、眉毛描くやつ」

「ああ〜、はいはいはい。アイブロウペンシルね。それならあるよ」

「よくわかんねーけど、描け。償いの意味も込めて魂を込めて描け」

「アイアイサー」

始業まであまり時間もないので急いで倉持を椅子に座らせ、化粧ポーチの中からペンシルを取り出した。
色は…、グレーだし何とかなるでしょう。

倉持の顔にそっと手を置いて、左右のバランスを見比べながら途切れた眉の続きを描いていく。
うん、我ながら完璧。

「よし、できた」

私の声に反応した倉持が閉じていた目を開けた。
ばちっと合った視線は思ったよりも至近距離にあって、お互いびっくりして大きく仰け反った。

「お、おおう…」

「ちけーよ」

「いや、描いてたから仕方ないでしょ」

気恥ずかしさを誤魔化すために乱暴に手鏡を押し付け、ペンシルをポーチの中にしまった。
鏡で眉毛を確かめた倉持は、満足してくれたようで何も言わずに頷いた。

「おーい、お前ら、ここ教室なの忘れんなよ」

と、その時、事の成り行きを見ていたらしい御幸が外野から茶々を入れてきた。

「うるさいっ!」

二人同時にそう叫んだところで、始業のチャイムが鳴った。

(20150524)

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