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攻防戦の御幸と私と生理痛

お腹が痛い、気が遠のく。
いつもは大したことないくせに、たまにこうしてびっくりするくらい辛い日がやってくるのはホルモンバランスの乱れなのか何なのか。
日頃の不摂生が悔やまれる。

「ちょっとなまえ、大丈夫?薬は?」

「大丈夫、飲んだから」

「お昼ご飯もほとんど食べてなかったでしょ。ゼリー飲料とか買おうか?」

「いやいや、本当大丈夫。あとは薬が効くのを待つだけだし」

優しい友人に心配されながら廊下を歩いていると、何と間の悪い!御幸さんが前方から歩いてきたではないですか。

「あ、なまえの彼氏」

「ちょっと、指さすのやめてってば」

この会話が聞こえたのかは定かではないが、パッと顔を上げこちらに気付いた御幸さん。
正直今この人の相手をしているほどの元気はないんだけど…。

「なまえちゃんじゃん」

「………どうも」

「あれ、今日はいつもに増して冷たいのな」

「普通ですって、普通」

「何、何かあった?」

ええい、そこに食いつかんでいい!さっさとどこかに行ってくださいお願いします。
こればっかりは人に言ったって仕方がないことだ。
おまけにイライラしがちなんだからなるべく言葉を交わしたくないのに、わざとらしく様子を窺ったりなんかしちゃって、ものすごく鬱陶しい。

「なまえ?」

突然強くなった下腹部の痛みに、立っているのも辛くなる。
早く保健室で横になりたい…。

「あ、今日ちょっとこの子辛いみたいで」

私の様子に気付いた友達が助け舟を出してくれたのを、意識の外側で聞いた。
貧血のせいで目の前が白く霞んで、さらに耳がちょっと遠くなったような感覚。

「………、ああ。くまさんの日?」

「くまじゃ、ないですってば…」

「いや、先輩。くまは昨日だったんですよ」

「ちょっと!何で…」

バラすの、と言いかけて完全に頭の中が白くなった。
あ、これやばいかも。
平衡感覚が掴めなくなってきてとりあえず手探りで掴めそうなものを見つけ出した私は、それに縋りつくようにしてそのまま意識を手放した。

*
*
*

「うわあ!」

目が覚めると知らない天井で、それに驚いて飛び起きた。
その声を聞いた保険室の先生がやって来て、私が貧血で倒れたことを教えてくれた。

「…すみませんでした」

「大丈夫よー。薬は飲んだの?」

「あ、はい」

「それじゃあ後は寝てなさい」

一体どれくらい寝ていたのだろうかと首を捻って確認すると、丁度5時間目の授業が終わったところだった。つまり丸々一時間寝ていたことになる。
そのおかげか、下腹部の痛みは随分マシになっている。

「失礼しまーす」

すると耳馴染の声が聞こえた。もうなまえちゃん起きてる?なんて馴れ馴れしく先生に話しかけているのは、御幸さんだ。

「お、目覚めたな」

「…御幸さん」

「くまさんの日って大変なんだな」

「だからっ…!」

「あ、間違えた。うさぎさんの日か」

「何でそれを…」

「なまえちゃんが倒れた拍子に見えちゃった。なまえちゃんが頭打たないよう体張って
抱き止めたご褒美として目に焼き付けといた」

え、そんなことしてくれたの…とときめきそうになって、やっぱりやめた。
何がご褒美だ。人のサニタリーショーツばかり見やがって。

「俺たちの出会いもあんな感じだったなーって」

「それはあんまり思い出したくないのでやめていただけますか」

「あ、そうだそうだ」

「ちょっと話聞いてます?」

御幸さんは手に下げていたビニール袋の中からゼリー飲料を取り出し、私に差し出す。

「飯ちゃんと食ってないんだって、お前の友達から聞いた」

「あ、ありがとうございます」

「あと、腹冷やさないようカイロ貼っとけ」

「あ、はあ…」

手渡されたゼリー飲料は室温に戻されていて、そんなところまでという気遣いが見えて何だかくすぐったい。
私がそれを飲みきるまで側にいて、空になったら回収してごみ箱に捨ててくれる。
普段はされない特別扱いが心に響く。

「御幸さん」

「ん?」

「すきです…」

「え!?」

御幸さんの優しさに触れて、不意にそう伝えたくなった。

(20150517)

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