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大学生の純さんと新入生@

※注意事項
大学2年生の伊佐敷を捏造しています。経済学部であまり野球はしません。苦手な方はご注意ください。

大学生になって夢にまで見たひとり暮らし。想像よりもちょっと部屋は狭くてほしい家具だって全部は揃えられなかったけれど、親に心から感謝をして心からひとり暮らしを満喫しようと思った。
学生マンションの3階の角部屋が私の新しいお家。4年間ここで暮らすんだという実感はまだ湧いていなくて、他人の部屋みたいでちょっと落ち着かない。
段ボールが山積みになっているのが原因だと気付いてから、荷解きをはじめた。

荷物もある程度片づけ終わった夕方、唯一のお隣さんにご挨拶に行こうと思い立った。

一体どんな人なんだろうかと漠然と考えながらチャイムを鳴らすと、思ったよりドアの近くからすぐに返事が聞こえた。
廊下に面した狭いキッチンでバタバタしている音まで聞こえてきて、なるほどマンションの廊下に出てから良い匂いがすると思っていたら、お隣さんが夜ご飯を作っている匂いだったのかと一人納得する。
ああ、そうだ、今日の夜ご飯どうしよう。

「はい」

勢いよく開いたドアが鼻先を掠めていって、一気に現実に引き戻された。

「あ、やべ。大丈夫か?」

「だ、大丈夫です、掠っただけなんで」

声のする方へ顔を向けると、つり目と顎鬚が特徴的な男の人が心配そうな表情を浮かべて立っていた。

「あの、私今日からお隣に住むことになりました、みょうじと言います。これ、よかったらどうぞ」

「ああ、隣の」

言いながら簡単に包装された洗濯用洗剤を差し出すと、お隣のお兄さんは一瞬驚いた顔をしてから何がおかしいのか笑いだしてしまった。

「何か不手際でも…?」

不安になって問いかけると、お兄さんは悪い悪いと言いながら洗剤を受け取ってくれた。

「ここって学生マンションだろ。だから隣への挨拶とかする奴なんかほとんどいなくてちょっとびっくりしたんだよ」

「おかしいことですか…?」

「いーや、みょうじが正しい。こっちこそ挨拶が遅れてすまねえな。俺は伊佐敷だ、よろしく」

「いさ、しきさん」

「おう。伊佐敷純だ」

「よろしくお願いします。伊佐敷さんは何年生ですか?」

「2年だ。お前新入生だろ、何学部だ?」

するとその時、伊佐敷さんの後ろから電子レンジの音が聞こえてきた。そうだ、伊佐敷さんは夜ご飯を作ってる途中だった。

「あの、すみませんお忙しいところ」

「別に構わねえよ。あーっと、みょうじ…」

「はい?」

じいっと何かを思案している伊佐敷さんに見つめられる。何だろうかと不思議に思って次の言葉を待つ。そうこうしているうちに、もう一度電子レンジが鳴った。

「もし、よかったら。何も準備してねえっていうんだったら、家で飯食ってくか?」

「え!いいんですか?」

伊佐敷さんはなんとまあ優しい人なんだろうか。今日はまだ家電製品や食器類が届いていなかったから非常に助かる。天の助けだ。

「別に取って食ったりしねえから、安心しろ」

「何をですか?」

「………、何でもねえ」

ほら、入れよと通されたお部屋は私の家とは左右反対向きの造りをしていて、ついでにすごく片付いていた。もうすぐできるからと言って、再びキッチンへと戻って行った伊佐敷さん。悪いとは思いつつも、ついつい部屋の中を観察してしまう。

本棚に目を向けると、大学の教科書やら小説、漫画などが一緒くたに収まっていた。私自身もそこそこ漫画や小説には詳しいつもりでいたけれど、本棚には読んだことがないものがたくさんあった。
うん、伊佐敷さんはもしかしたら結構マニアなのかもしれない。

「みょうじ、できたぞ」

「あっ、はい」

じっと本棚を見ていた私は、突然開いたドアに驚いた。本棚の前からローテーブルに移動して伊佐敷さんのお手伝いをする。
今日の夜ご飯はポトフとカルボナーラパスタにそれからサラダ。意外と可愛らしいメニューだと思ったことは内緒にしておこう。

2人で手を合わせて、いただきます。

「さっきの続き。みょうじは何学部だ?」

「経済学部です。明日お昼からガイダンスがあるみたいで。シラバスはもらったんですけど授業の組み方とか全然わからなくて…」

「じゃあ俺の後輩だな。経済学部の良い授業とか色々教えてやるよ。あと、必修専門の教科書とか、同じのだったらやるよ」

「すっごく助かります。何から何まですみません、今日初めて会ったのに」

とてもおいしいご飯をいただいて、さらには親切にしてもらって、すごく素敵なお隣さんをもって私は幸せだなあ、としみじみ思う。

「いいんだよ、それくらい。みょうじだってひとり暮らし始めたばっかで不安だろ」

口の端っこにカルボナーラのソースを付けたままにかりと笑う伊佐敷さんが、間抜けなはずなのに何だかすごくかっこよく見えた。

(20150208)

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