▼ イマージュ:ブロッケンJr
元ネタ
「悪かったって」
ブロッケンJrは虚空に向かって謝罪した。否、人はいる。ただブロッケンJrが認識できないだけだ。ずっと昔からブロッケンJrの屋敷に仕えているメイド、名前がそこにいるはずなのだ。
「いえ、坊っちゃま。私は全然、これっぽっちも気にしてはおりません。まさか、今の今まで幻聴や幽霊だと思われていたなんてすこーしも気にしてはおりません。ええ、全く」
これはかなり気にしている。見えないながらも声だけで感情は感じ取れた。不機嫌だ。こんな不機嫌な彼女は初めてだった。名前の初めての一面に戸惑ったがそれ以上にブロッケンJrの内には焦燥感が燻っている。名前が本当に存在している。他にも彼女を認識している者がいる。自分だけのモノだと思っていた。でもそうでは無かった。どうすれば、どうすれば、どうすれば、早くこのメイドを自分だけのモノに戻さないと。
「坊っちゃま」
「、!!」
声が近い。手を伸ばせば触れられる距離に名前はいるのだろう。けど姿はわからなかった。
「本当に気にしておりませんからそんな思い詰めた顔をしないでください」
ああ、気遣う声が愛しい。
「その、触っていいか?」
ブロッケンJrは手を伸ばす。少し微笑む声が聞こえると
「貴方様が望むなら」
手に暖かい感触が伝わる。だが触れても名前の姿が見えることは無かった。惜しい、もし見えていたなら
prev / next