万太郎になっちゃったよ | ナノ


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僕、キン肉万太郎には趣味がある。別段、特殊な趣味でもなんでもなく。ただ、料理をすることがちょっとした趣味だったりする。前世は料理なんてそこまで好きだったわけではないけどニンジャ先生に軽く習い出来るようになってからはちょっとした楽しみになったんだ。でも、残念なことにHFに入校してからといもののめっきり料理をする機会が減ってしまって。地球に来て増えるかと思えたけどよくよく考えるとキン肉ハウスには調理器具どころかちゃんとした調理場がない事実を失念していたんだ。

このままではニンジャ先生に教わった料理テクニックも廃ってしまう。

そう危惧した僕は大方の本編イベントが落ち着いた頃から定期的に晩御飯を作る名目で凛子ちゃんの所に通っては料理を作っている。自分の趣味に巻き込むのは申し訳なかったけれどそう言ったら凛子ちゃんとマリさんに遠慮しなく良いと怒られてしまったんだっけ。

そして僕は今、凛子ちゃんの所から料理を作り終えて帰宅する途中なんだけれど。目の前に僕が作った料理が入ったタッパを包んだ風呂敷をじっと見つめるチェックメイトが佇んでいる。

「えー、こんばんは。チェック・メイト」
「万太郎、それは何ですか?とても美味しそうな匂いがします」

ちょっとだけチェック・メイトの話をしよう。彼はサンシャインのお弟子さんの一人で僕と闘った経歴を持ち色々な心境の変化の後に正義超人に転身した元悪魔超人なんだけど正義超人になってから彼のとある箍が外れてしまうんだ。幼少期から厳しい食事制限をしていた反動なんだろうね。今の彼は食に貪欲な自他ともに認める食いしん坊キャラになってしまった。彼が食べ歩く様を僕はしょっちゅう見かけるのだけど本人はパトロールだと自称している。

と言うわけで彼がこの風呂敷に興味を持つ理由は大体わかる。彼の食べ物センサーがこの風呂敷に反応していると言うことなんだろう。本来のチェック・メイトは礼儀正しいので挨拶したらちゃんと返すからね。

「これは僕とミートの晩御飯のおかずだよ」

隠す理由もないので正直に話すとチェック・メイトの瞳がキラリと光ったように見えた。

「万太郎、そのおかず食べたいです!」

ん?人の話を聞いてたのかな?僕とミートの晩御飯って言ったんだけどなー?

「ダメ、ですか?」

一昔のCMのチワワみたいな目をしてもダメだから!

ぐぎゅるるる

くっ!このタイミングでお腹の音まで出すだと!?どこまで食いしん坊キャラを極めるつもりなんだ!あざとい!チェック・メイトあざとい!でも僕は屈しないぞ!


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