万太郎になっちゃったよ | ナノ


▼ 理想虚像:ケビンマスク

万太郎は誰が見ても理想の正義超人だと言われるだろう。ヘラクレスファクトリーでは優秀な成績で卒業し礼節を重んじて誰にでも平等に優しく不正は行わずフェアなファイトで勝ち続け仲間にも恵まれ正義超人の中心にはいつも万太郎がいる。ケビンマスクから見てキン肉万太郎は完璧な正義超人だった。気持ちが悪くなるくらいに。万太郎を見ていると身の毛がよだつ。もし自分が家を飛び出さずただ黙ってダディに従って生きていればああなってたかもしれないと思うと見ていてヘドが出そうだった。

「さぞお前の家は息苦しかったんだろうな。逃げようとは思わなかったのか?」

ケビンは万太郎と仲良くなる気なんて毛頭無く話すらもしたくないと思うほどには毛嫌いしていたが超人レスラーとしては彼を誰よりも認めている自負がある。卓越した技術と発想。冷静で的確な判断力と最後まで諦めない確固たる精神。万太郎は強かった。その強さがあるからケビンは万太郎を完全に無視することができなかった。その強さがなければケビンから万太郎に話しかけるなんて選択は生まれなかった。そのはずだとケビンは自分に言い聞かせる。しかもこんな下らない質問を、

万太郎はケビンの質問に困ったような笑顔で律儀に答える。

「僕は逃げられなかったんだ」

ケビンは万太郎の表情どこかで見たことがある。あれは諦めた者の顔だ。


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