万太郎になっちゃったよ | ナノ


▼ 側にいさせろよ:テリー・ザ・キッド

「友達がいがねーよなお前」
「来て早々、なんなの君は」

万太郎が久々に地球に来ていると聞いて会いに行けば忙しいからと門前払いを食らいキッドはご立腹だった。カッときたので万太郎専用の執務室に勝手に上がり込みジと目でデスクで書類整理をしている万太郎に不満を言う。

「地球に来たなら連絡ぐらいしろよな」
「しなくても勝手に来るじゃないか」

万太郎はうんざりした顔で書類に目を戻し作業を続け全く君は暇なのか。と気怠げにぶつくさ呟いている。ムッとしたが万太郎の目元を見て文句を飲み込んだ。

隈が凄いな。

「万太郎」
「ん?何?」
「お前、何日寝てないんだ?」

万太郎は少し考える素振りを見せると

「今日で一週間目くらいじゃないかな?」
「いっ!?ばっ!バカ寝ろ!!」
「ちょっ!引っ張らないでよ!まだ僕は逝ける!後、二週間は!!」
「こんのアホー!!馬鹿言ってないでささっと寝ろー!!」

万太郎はこう言うところがある。あっけらかんと当たり前のように無茶をする。周りが何を言っても困った笑顔を向けるだけで改善しようとしない。百歩譲って無茶をするのはいい。頭に来るのは誰にも頼ろうとしないところだ。長い付き合いだがキッドは万太郎のそう言うところが未だに嫌いだった。

何時だって悪魔の種子の戦いも時間超人の戦いでも誰にも何も相談せずなんでもかんでも自分勝手に決めて。全ては好転した。結果は失うものは少なく理想的と言えるだろう。でもキッドは無性に腹が立った。万太郎だけが傷ついている気がする。お前ばかり損してるんじゃないのか?今だって

「超人は万能じゃないんだぜ?」

情けない声が出る。声と同じで情けない顔をしているのかもしれない。確かに万太郎には腹が立つ。だが一番に腹が立つのはそんな万太郎を支えきれない自分自身だ。

「キッドは心配性過ぎるよ」

万太郎は困ったように微笑み

「これ終わったら僕、しばらく休めるんだ。結構長い期間ね。だからさ久しぶりに皆で遊ぼうよ」

へらりと万太郎は笑った。万太郎のこの一言で苛立ちが全て吹き飛んでしまった。あー!くそ!こいつは!キッドは緩みそうな顔を必死に抑える。

無茶をするお前は嫌いだけど健気に頑張るお前は好きだ。

わかってる。皆の為でキッドだけの為ではないのは。でもハグしたい、キスしてやりたい。好きだ。万太郎、お前が。

「今日中に終わるんだろうな?」
「え?無理だけど?見てわかんないの?」
「…」

人を一気に落胆させるのも万太郎だった。俺、お前のそう言うところも嫌いだ。

「二週間、待ってよ。二週間で終わらせるから。だから僕は寝ない。寝てたまるか、今寝たら死ぬ。だから寝ない。絶対に、絶対にだ!」

鬼の形相でデスクに戻る万太郎にキッドは深い溜め息を止められなかった。結局、こうなるのか。この頑固者の大バカ野郎!

「なら俺は二週間、ここに居るぜ」
「いや、帰りなよ。はっきり言って邪魔だから」
「絶ッ対、帰らねぇからな!」
「とんだ暇人だな君は!帰れ!」

どうせ休みの間、四人なんだから多目に見て欲しい。せめてこの時くらい。


prev / next

[ back to top ]