万太郎になっちゃったよ | ナノ


▼ ちょっと貴方が心配かも:二階堂凛子

二階堂凛子にとってキン肉万太郎は頼りない超人である。確かに万太郎は他の超人に比べて小柄で少し細身だが決して華奢というわけではない。その肉体は絞り込んでおりしなやかなで無駄の無い筋肉に覆われている。顔(マスク)は不細工だけれど一度リングに上がれば彼は負け知らずだ。不覚にもそういう所はちょっと格好いい。だとしても、

何か、頼りないのよね

凛子が万太郎を頼りなく感じるのは万太郎の纏う空気だった。上手く言えないが力強さを感じない。男らしくないというか、表情も何時も困った笑顔が大半で余程の事がないと怒らないしリングに上がる寸前なんて凛子が知っている限り浮かない顔が多かった。他の超人とは何か違和感を凛子は感じたがその正体まで掴めない。

そんな訳でどうも凛子は万太郎が放っておけなかった。万太郎が弱くないと言うのは知っている。そこら辺の超人より全然強いし何度も助けられたことだってある。心配なんてお門違いだろうけど

「凛子ちゃん、大丈夫?」

万太郎の声で凛子は我に帰った。彼は心配そうに凛子の様子を伺っている。そう言えば今、買い物付き合ってもらってるんだっけ。飲み物や食材が入った買い物袋を両手一杯、軽々しく持ち上げている万太郎を一瞥する。

凛子は万太郎が嫌な訳じゃなかった。万太郎が凛子を悪行超人から守ってくれた。万太郎のお陰で凛子は大好きな母の過去を知ることが出来た。今だって母に頼まれた買い物も手伝ってくれている。頼りなく感じるけど凛子が万太郎を嫌う要素なんて一つもない。ただ、

「あんまり無理しないでよね」
「?、何?凛子ちゃん?」
「何でもない!」

凛子は万太郎の腕に抱き付くと自分の家である住之江幼稚園へ向かった。


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