万太郎になっちゃったよ | ナノ


▼ お前の眼を魅せろ:スカーフェイス

伝説超人キン肉マンの息子、HF不動のNo.1、新世代超人の超新星、正義超人の申し子。HFに潜入してからというものの彼の異名、噂は嫌でも耳に入った。しかし、スカーフェイスはどの異名にも魅力が感じられなかった。まるで空想話を聞かされているよう。スカーフェイスはキン肉万太郎に現実感が持てなかった。同期であるジェイドは万太郎にお熱なようでほぼ毎日、過去の試合を(強制的に)見せられたものだが、余りにも品が良すぎる教科書通りの戦い方で酷く退屈したものだ。寝ようものなら厄介なことになるので眠れなかったのが彼、唯一の苦い記憶であるのはさておき。

つまる所、スカーフェイスにとってキン肉万太郎はとるに足らないつまらないお上品な豚面の坊っちゃんであった。

でもそれは彼と試合する前の評価だ。スカーフェイスは自分の運の良さに感謝した。dmp内乱後の崩壊でも生き残りHF卒業後、じっくり復讐し野望を果たす予定が親善試合という巡り合わせにより急速に繰り上がったのだ。面白いくらい物事が順調に進みすぎて笑いを堪えるのに必死だった。まずはデリー・ザ・キッドを降した。オーバーボディが破損し自身の姿が露呈したが予想の範囲内で問題ではなく次にジェイド。ケビンマスクが現れたのは流石に予想外ではあったが過去の恩がケビンマスクの判断を鈍らせ結局はここまできた。

最後に勝ち残ったのは、スカーフェイスとキン肉万太郎だった。面と向かったのはリングに上がって初めてだった。それまで眼中に無かったのだから仕方が無い。しかし、スカーフェイスは万太郎と目を合わせた時に自身の評価を覆す必要があると認識する。

眼だ。眼が違う。

蒼い瞳の奥に泥々とした欲望が渦巻いている。自然と笑みが深まる。なんだよ、こいつ。何処が理想な正義超人なんだ?あの眼は正義とは程遠く、周りはキン肉万太郎の何を見ているのだろうか?と可笑しくなる。かくして運命のゴングが鳴る。酷く残念だ。あの眼をもっと見ていたかったぜ。そう、感想を漏らしたのは病院のベットの上だった。


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