novel | ナノ



ジローがべろんべろんに酔っ払ってしまった。
ろくに歩けもしないくせに俺にくっついて回ってはベタベタ抱きついたり服を引っ張ったりぐりぐり頭を押しつけてきたり。酒臭いはゲロ臭いはで正直勘弁して欲しい。

「あとべ逃げりゅなよ〜!」
「逃げる。断固逃げる」

と言っても部屋のなかをぐるぐる回っているだけだが。
ジローに酒を飲ませ続けた張本人どもは自分たちもべろんべろんに酔っぱらって帰っていった。主犯格の岳人は俺の部屋を居酒屋代わりに使い酒を持ち込みベッドで跳ね回り部屋を散らかしまくって帰っていった。明日殺す。そんな岳人を引っ張って一緒に帰った忍足は一見冷静そうに見えながらきっちりと酒を楽しみ、口では「岳人いい加減にしいや」ともっともらしい事をほざいておきながら恐らく大体の酒を集めたであろう岳人の協力者だ。明日殺す。ジローと同じく被害者なのは騙されて連れて来られた宍戸ぐらいだろう。呂律が回らないくらい酔っ払った宍戸は説教上戸らしく慌てて迎えに来た鳳に連れていかれながらもぐちぐちクドクドと説教を垂れていた。明日の練習は少し楽にしてやろう。

「おい、いい加減離れろ」
「やだぁー!」
「くっそ……」
「あとべぇお風呂入ろぉ〜?」

断固断る、と言いたいところだが今のジローをひとり風呂場へ投げ入れるのは不安過ぎる。滑って転んであの世行きなんてシャレにならん。本気でやりそうで恐ろしい。

「……さっさと入るぞ」
「うぃ〜!」

元気なわりに自力で服が脱げずモタモタしているジローの服をすっぽ抜きとっとと風呂場へ押し込んだ。

「ふたりでお風呂久しぶりだねぇ?」
「そりゃあこんな歳になってまで人と入らねぇだろ」
「なんかどきどきするねぇ?」
「……うるさい」

ふらふらするジローの頭を多少乱暴に洗うと少し激し過ぎたのかまたもゲロゲロと吐き出したので呆れつつも背中をさすってやる。おかげで少しさっぱりしたのか酔いが冷め始めたのか、体を自分で洗い始めたのでその間に俺は自分の事を済ませ、ほぼふたり同時に湯船に入った。

「あとべ筋肉ついたねぇ?」
「なんだ急に」
「久々にあとべの体見るからさぁ」

へらへら、どんな目で見てるんだお前は。

「てめぇこそ……」
「ん?」
「……」

なにか言い返そうとジローの体をまじまじと改めたのが失敗だった。言葉をつまらせた俺にジローは水を滴らせながら目を細め、首を傾げる。その姿にまたも言い知れぬものを感じて癪な事だが俺様も健全たる男子という他ないのだろうか。こんなちんちくりん相手に。

「言いかけ……なぁに?」
「黙れ、黙ってろ」
「え〜!ひどいあとべぇ〜」

酒の影響で舌足らずが5割増しなのも腹が立つ。程よくついた筋肉は物足りなさも感じるが骨張ったなかに柔らかそうな肉づき、白い肌に馬鹿な色した頭が水気をおび酒が入っただけでこうも普段と違うのか。
さらに若干潤んでいるジローの瞳に俺はますます腹が立ち無愛想にジロー目掛けてお湯をひっかけた。


とりあえず明日、ダブルス2を殺す。


酔うと通常以上に甘えるジローかわいい。それにイライラむらむらする跡部カムヒア!
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