novel | ナノ



俺が跡部のことを好きになったのはいつのことだったか。
幼い頃から一緒に遊んでいて、気づいたら当たり前ように好きになっていた。そしてのめり込むように片思いをしていて、諦めたつもりでいながらそれでもやっぱり捨てきれずにずっと好きだった。

跡部はとにかく輝いていた。誰もが放っておかないような存在だった。昔からモテていたし、昔から女の子をとっかえひっかえしていたから、この女好き野郎!だなんて何度心のなかで毒を吐いたか数え出したらキリがない。
二股、三股どうこうの次元じゃないくらい、それはもう跡部は遊び放題だった(それほど、それでもいい!という女が多かったとも言える。俺はそんなその他大勢のなかにも入れないんだと思うと、哀しくて少し泣いたことがある)


そんなある日、暖かくなって春の陽気が出始めた頃、跡部が女遊びをパタリとやめた。そういえば最近休みの日でもよく会ってるな、と思いそのままそう口に出したら女と会うのをやめたからな、とさらりと言われてとても驚いた。
素直になんで?と問いかけた俺に対して跡部はとても色っぽく目を細めてなんでだと思う?なんて笑い返してきたので俺はにへらと笑いながら曖昧に戸惑うばかりだった。

跡部のことを好きになって、とても、とても長かった気がする。
時には女の子たちに嫉妬して、時には羨望の気持ちを持て余して。他の人を好きになろうと努力もしたし跡部に近づき過ぎないように張り詰めていた時期もあった。跡部のことを想うと胸がきゅうとして暖かくなって、かと思えばぎゅううと潰れそうなくらい苦しくなって、いっそ口から心臓が飛び出してくれれば楽なのにとえづきながら泣きじゃくったこともあった。苦しくなったら必ず部活をサボるようなフリをして人知れず姿を眩ましたものだった。
だって、とても好きだったのだ。
幼い頃からずっと、押さえ込んできた恋だった。


なんでだろう?なんて、笑い返してきた跡部に首を傾げながら俺は内心とても心がざわついていた。もしかして跡部に心から好きな人が出来たのだろうか、もしそうだとしたら俺は笑顔で良かったじゃん、どんな子?今度会わせてーなんてとてもじゃないが言えやしない。どんな拷問だよ、神様!とか頭のおかしなことを口走ってしまうかも知れない。
それとも、跡部の家のことだからフィアンセが出来たとか言い出すんじゃないだろうか。ぐるぐるぐるぐる、視界が歪んできた頃にようやく跡部は口を開いた。
俺がお前と付き合いたいと言ったら、お前は俺を嫌うだろうか、と。


とても長い、とにかく長い片思いだった。
跡部の初恋も跡部の初チューも跡部の初体験もいつどんな時期にどんな場所でどんな子としたのか全て把握しているくらい、長く、そして距離の近い片思いだった。
跡部の経験を知る度、嫉妬と羨望と苦しさととにかくたくさんの感情に押し潰されてきた。俺の気持ちなんて跡部には到底わからないだろう。
それでも、俺は跡部が好きだった。どうしようもなく好きだった。俺は今日この時、ずっと羨望してやまなかったこの時を以って、死んでしまってもいいと思った。


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