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 “好き”って気持ちは特別なんだからさ、“好き”で何事も解決出来ちゃえば良いのにね。
 そうに言ったら跡部は途端に泣き出しそうな顔をして、跡部らしくないなぁなんてまるで他人事のように思った。

 例えばさ、全世界の人達が俺達の関係を知っていて、全世界の人達が俺達の関係を肯定してくれたなら凄く凄く嬉しいだろうね。でも、例えそうでも、やっぱり結局は不幸せでしかないんだと思うよ。どう頑張っても俺達は非生産的な関係でしか築けなく、どう頑張っても俺達は不毛な反逆者でしかないんだ。だってそうだろう。結局俺達は男で、結局俺達は子孫を残せないのだから。
 凄く日本的な考えなのかも知れないけれど、やっぱり俺達ははみ出しものでしかないんだよ。

「女が抱けない訳じゃないでしょ」

 女が抱けない訳じゃない。そうに言ったら跡部はまた泣き出しそうな顔をした。少し否定されたぐらいで泣き出しそうになるぐらいそんなに俺が好きなのか、可愛いやつめ。跡部のくせに。

「俺達は同性愛者じゃないんだよ。かと言ってバイでもないじゃん。跡部は俺しかダメで俺は跡部しかダメで、ようはお互いしか無理な訳で」

 同性愛者だって立派な人間だ。その人達を否定する気は毛頭ない。ただ単に俺は跡部と俺の二人を否定して蔑みたいだけなのだ。
 女を好きな異性愛者のくせに男とくっついて、それも若気の遊び(好奇心が先立ってとりあえずやってみるとかそういうの)じゃなくて本気の愛ときたもんだ。救いようのないバカだね俺達は。本能(子孫繁栄)と神様への反逆だと思わないかい。

「精液で子供が作れないなら精液である必要がないよね。だったら別に精液で子供を作るというシステムを無視しちゃっても良いんじゃないかな」

 ほらだって俺達はほらほら、はみ出しものなんだから。常識なんて語る必要もないでしょ。はみ出したやり方でやれば良いだけの事だよ。でも俺はちゃんと知っているんだ。結局のところ俺達はそこらの人間となんら変わらない普通の人間だという事をね。

 “好き”という気持ちは酷く美化されて表現されるものだ。だから俺は知っている。
 所詮形のないものはさほど俺達の役になんて立ってはくれないという事を。
 愛だけじゃ、この腹は膨れない。
 それが一番バカげていて、これ以上ない程的確な決定的な証拠であると、俺は跡部に笑顔を向けた。


ようはお役ごめんって事さ。

(精液も、愛もね)


「“好き”だけで子供が生めたら、全て解決出来ちゃうのにね」

(愛だけじゃ膨れない:Aコース)

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