拍手収納 | ナノ



 爪をかじる事が小さい頃からの癖だった。それは精神が少し不安定だとかストレスでかじってしまうだとかそんな事を良く聞くけれど、でもそんな事はどうでも良くて、あまり心地よい行為じゃないから治せとも言われたけれど、でもなかなか治るようなものでもなかった。

「元々はさ、跡部のせいなんだよ」

 中庭で一人そう呟いて俺は爪をかじる。

「跡部が俺を魅了するから、俺に片想いなんてさせるから」

 俺は跡部を純粋に尊敬していた。けれどいつしかその尊敬は俺に違う感情を生み出して結果的に俺は跡部に恋をする。それからというもの俺は跡部の事を考える度爪をかじってはボロボロにしてしまうのだ。

「だから俺は爪のかじり方ばかりが上手くなっていくんだ」

 跡部は絶対に俺を好きになんてならない。

「っ、痛……」

 指先にピリリとした激痛が走った。慌てて口から離して見てみればなんて事はない。爪をかじり過ぎて血が出てしまっただけだった。それをしばらくぼんやりと眺めてからとりあえずまた口に含んで今度は傷口を何度も舐める。痛いなぁ、痛い。痛いよ、跡部。

 跡部は俺を好きになんて絶対にならない。だから俺が告白なんてしたらたちまち彼は頭を抱えて無駄な負担を与えてしまう。跡部が爪を噛むような事態になるぐらいだったら、俺は爪を全部食べてしまったって構わない。

「痛い……」

 けれど、痛いと一人嘆くぐらいはどうかせめて許してくれよ。

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