~2010 | ナノ




「跡部ってなんか欲しいもんあんの?」
「地球」
「ごめん聞いた俺がバカだった」

 跡部の誕生日って実のところとても難しい。まず跡部は学校終わったら家の方のパーティーで会えなくなるし連絡取れんのは夜遅くになってからでそれこそ日付が変わるぎりぎりだ。そうに考えると学校で会える分ラッキーなのかも知れないがそうであったって実際会って話せる時間は朝練と昼休みと放課後ぐらい。朝練は俺出ないし昼休みは跡部が忙しければそんな会えないし放課後だって部長さんだから自由時間はそれほどない。せめてプレゼントだけでも、と思ってもそれが一番の難題だ。
 跡部の欲しいもんなんて俺には到底買えないし下手なもんあげたって跡部は喜ばない。逆に迷惑になるしなにより俺が恥ずかしいしで、さてどうしたもんか。

「別に無理しなくても祝いの言葉がありゃ十分だ」
「そうに言うけどさ、だったら俺の誕生日の時もそうしてよ。納得いかない」
「自分の事はともかく、祝い事は祝う主義なんだよ」
「それずるいっしょ」

 とにかく、お前のくれるもんだったら受け取ってやるからそう深刻になるなよ。と言った跡部に少々ふて腐れながら(でもちょっと嬉しかった)、視線を今座っている芝生の横へとちらりと流す。その時目に入ったものにちょっとばかし閃いた。

「じゃあ、お金じゃ買えないものあげる」
「なんだそれ」
「はいどーぞ」
「なんだこれ」

 俺は身体を伸ばして先ほど目に入ったクローバーをぷちんっとむしると跡部の指に巻き付けた。そうやって五秒も経たずに出来上がった即席の指輪は跡部の綺麗な指にはとても不釣り合いに見える。

「どう、お金じゃ買えないでしょ」
「買えねぇっつーか、買わねぇ」
「だってなんかもう面倒だし、俺の金で買うプレゼントなんかタカが知れてるし、でもプレゼントはあげたいし。だからもうそれで良いよ。日付は早いけど、幸せになれるよ」
「幸せって……お前これただの三つ葉じゃねぇか」
「えー、ちゃんと見てよ!ここの葉っぱ割れてるじゃん」
「即席の四つ葉かよ……ますますご利益ねぇな」

 もらえるだけマシだって。そうに言ったら「お前が言うなよ」と頭をやんわり撫でられた。ねぇ跡部、四つ葉のクローバーの花言葉、知ってる?

「前滝に教えてもらったのを思い出したんだけど」
「ああ」
「幸福」
「まんまだな」
「と、あともうひとつ」

 俺は跡部のネクタイを力の限り引っ張ってお互いの鼻先がくっきそうなぐらい大幅に距離を詰めた。突然の事に呆気に取られている跡部に、してやったりと微笑んで息が掛かるほどの距離のままはっきりと言ってやる。

「“私のものになって”」

 そして軽くリップ音を鳴らせると跡部はしばらく考えてから「今更だろ」と優しく笑い「逆に言えば俺はもう跡部のものだってなるよね」と俺が言えば「確かに金じゃ買えねぇな」と跡部はごく眩しそうに笑った。跡部誕生日おめでとう!


終101004
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