~2010 | ナノ




「水星、金星、地球、火星、木星、土星……か、海王星」
「残念、残念だ。お前の頭が」
「ワンモア!ワンモアチャンス!」

 太陽系9惑星の並びを言えたらキスを跡部がしてくれる。太陽系って何だよとか思った俺だけどとりあえず今頑張っている訳で、お陰さまで星の名前は全て覚えられた。冥王星だって知っている。昔妹と一緒に見ていたセーラー○ーンのお陰でなんだかすんなり頭に入ってきたし、セーラー○ーンが見たくなってきたぐらい星に親近感が湧いていた。ちなみに俺プルートが好きだ(今度忍足に話題を振ってみよう)

「惜しい気がする。果てしなく惜しい気がする」
「ああ、惜しかったぜ。果てしなく可哀想な頭だ」
「そこまで言わなくても良いじゃん!俺の理科の成績知ってる?XだよX!ABCD段階の中で謎のXだよ?」
「逆に凄いぞお前」

 絶対オカシイ。俺理科は好きな方なのに。俺はモゾモゾとコタツに潜って少々いじける事にした。ちなみにここは俺の家の俺の部屋で、なんとなしに付けているテレビではいつかに見た事があるオープニングが流れている。

「遺伝子レベルの話しをしよう!だってよ」
「遺伝子……」
「遺伝子は知ってるだろ」
「知ってっし!」

 遺伝子はあれだよ。親と子の絆だよ、うん。しかし跡部、俺は今遺伝子どうこう言っている暇はないのだ。太陽系よりも更にゴニャゴニャっとした難しい話しをされるだなんて真っ平ごめんだし俺は一刻も早く9惑星とやらを言い当てたいのだよ跡部さん。水星、金星、地球、火星、木星、えーっと……そうだ、天王星!……ん?

 太陽系の9惑星の並びを言えたら、と言われた直後即座に「日月火水木金土!」と叫んだらひっぱたかれた。どうやら俺は15年間勘違いをしていたらしい。絶対俺がバカになったのは跡部がボカスカと頭ばかりを殴るからだと思う。でも「たまには頭意外も狙ったらどうだい」と一回言ってみた時に頬を叩かれて、余りの精神的ダメージについ本気で落ち込んだ。自分からやっぱり頭でお願いしますと頼み込んだ苦い思い出が今でもはっきり頭に刻み込まれている。

「遺伝子……遺伝子か、どんな裏技使ったら跡部みたいな遺伝子持って生まれて来れんのかな」
「嫌味か」
「あー……水星、金星、地球……」

 正直俺の知識では遺伝子ってよく聞くよなぁと感じるぐらいで知識らしい知識なんてのは持ち合わせてはいない。けど何となくは分かる。跡部の遺伝子を貰える子供は羨ましい限りだ。ただ物凄い優しい人と結婚してその鬼畜さは中和した方が良いと思うよ、俺。

「一番は樺地だな」
「あ?」
「跡部のお嫁さんに一番理想的な人」
「俺に樺地を抱けと?」
「うわ、言わなくて良いしそういう事」
「言ったのはテメェだろ」
「うーんでもさ、跡部と樺地の遺伝子を受け継いだ子、見てみたくない?」
「そうでもねぇ」
「うーん……」
「俺は俺とお前の遺伝子を継いだ子供を見てみたいけどな」
「はー?」

 そんなんどんな子が生まれるか分かったもんじゃない。樺地もだけど。とりあえず跡部の子供なんだから良く出来た子なのは確かだろう。ただ俺の体たらく振りが色濃く受け継がれちゃったりすると跡部家代々に申し訳ない。あ、そうだよ。子供作るんだったらまず跡部のご両親諸々にご挨拶しなくちゃいけないじゃん。それって凄い緊張だな。俺みたいなアンポンタン(これは謙遜であって俺は決してアンポンタンではない)はご両親に認めて貰えないかも知れない。うわあ、そう考えるとなんか今の跡部の台詞、プロポーズみたいだ。なんて、へへ、照れる。

「脳みそ入ってるか、お前」
「失敬な!入っていないとでもお思い!?」
「察せよ」
「何を」
「はああー……」
「ため息やめて!」

 失礼だ。失礼過ぎる。跡部には俺がミジンコにでも見えているのか。

「俺は、お前に、プロポーズ紛いな事を言ったつもりだったんだが」
「……は?」

 嘘だ。
 幻聴じゃありませんよね。徐々にゆっくりと跡部の言葉を噛み砕いて、真意を読み取っていくと自然と頬が熱くなった。冗談紛いで思った先程の思考を思い返してなんだか異常に恥ずかしくなってコタツから思いっきり飛び出す。軽く膝を打ったけど気にしてはいられない。なにせ、すげぇ恥ずい。なんか恥ずかしい。でもなんか凄い、嬉しい気がしたから。

「跡部、跡部!」
「なんだようるせぇな」

 跡部の、口振りとは裏腹にニヤついた口元を見る限り俺の頬は多分結構な赤を作り出していて、コタツで暖まっていたのが仇になったかもしれない。俺は頭をフル回転させ、頭の中に銀河系を巡らせて。この時の一瞬、多分俺は近年稀に見る天才だったに違いない。

「水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星!」
「……」
「どうだ!」

 若干息を切らしながら、叫ぶように言った9惑星。頭の中は星のかわりに美少女戦士が巡ってた。跡部は驚いたのか少しばかり停止した後ニヤリと笑う。それは嫌味ったらしい笑顔でもあったがその笑顔に俺の顔はまた熱くなって。飛び出した勢いで膝立ちになっている状態のまま、上体を跡部の方へと俺は傾けた。





「んふ」
「キモい」
「酷っ!!」




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