~2010 | ナノ




冬休みに入って侑士は大阪の実家へと帰った。正月を一緒過ごせないのは寂しいが正直こういった正月は嫌いではなかった。




1月1日、新しい年明けの朝にポストを覗くと予想通りにハガキの束が転がっていて嬉しくて心が踊る。それを手にとって家族宛のものと自分宛のものとで分けておく。
自慢じゃないが友人が多い岳人はそれなりの量の年賀状を毎年貰っていた。送っていない相手から来た年賀状は別のところに置いてお返しを書いてまた送る。


ある程度のハガキの束を抱えマイペースに見ていくとお馴染みの面々からのハガキを見つけて思わずニヤリと岳人は笑った。
樺地や鳳はもちろんいつも生意気言っている日吉からの年賀状を見て彼の律義さを改めて思う。達筆で書かれている新年の挨拶は手書きだったがプリントが増えた今、プリントと言われても不思議に思わない程の出来栄えである。

感心しつつも彼に送った年賀状に小さくヒヨコとキノコを描いておいたのを思い出し岳人はつい吹き出した。


宍戸からの年賀状は可愛い干支のプリントがされたもので毎年何かと投げやりだ。それに比べ跡部からのものは無駄にきらびやかで無駄にきらびやかな跡部の写真付き。ジローからは稀に来なかったりするが来たとしてもバランスの悪い「明けましておめでとうございます」の一言か、酷い時には「あけおめ」だけでハガキの一面を埋めているものもある。

「おっ」

しかし今年は妙なイラスト付きで岳人は思わず短く声を上げた。恐らく今年の干支の絵だろうがどう頑張って見てもアメーバかメタモンにしか見えず逆に凄い絵だなと感心する。


それをテーブルの上に置きながら次のハガキに目をやって、岳人はごく幸せそうにまた笑みを溢した。
離ればなれで侑士とは暫く会えないし会えていないがその時間は不思議と岳人は嫌いではない。

それは年賀状を貰った時の嬉しさが倍になる気がしているからで。


なんだか遠恋チック。
そうに思って自分で自分を笑った。毎年実家へと帰っているから侑士への年賀状も住所を教えてもらいその実家へと送っている。
他の奴らは面倒だからと侑士が一人暮らしをしているマンションに送っているが、岳人の年賀状だけでもすぐに見たいという侑士の強い願望によりそうにしている。
侑士の母親とかにこの子誰?とか聞かれていたりはしないだろうかとちょっとドキドキもしていたりした。侑士なら普通に隠す気もなく関係を言いそうだと岳人は思う。


けれど距離があるって結構好きだ。岳人はそうに実感しながら侑士から届いた年賀状を窓から差し込む朝日にそっとかざしてみた。
今年初めて見るであろう侑士の顔はきっと今年も笑顔だろう。

初詣も一緒に行けないのは残念だが、今年一年の願い事はもう決まっている。


今年一年も、どうか侑士が元気でありますように。

なんだか夫婦チック。
そうに思って岳人はまた自分で自分を笑った。



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