薔薇は好きだ。赤々しく光る花弁がおりなす無駄のない美しさや気品、存在感。人に危害を与える攻撃的な棘とのコントラストはまさに女王のようで、儚さ、力強さ、美しさ、そして情熱という全てを超越した完璧なる花、それが薔薇である。
俺の薔薇に対する思い入れは例えるならば日本人が桜に対して異様なまでに執着しているそれに似ている。もはや薔薇は“全ての美しさを超越している美々しき花”以外の何物でもなくなっているのだ。
そして多く、薔薇は男性が女性にプロポーズをする際によく用いられていた。今やそれを受け入れられる女性は少なくはなったが、やはり薔薇の花束というものに強い思い入れがある以上それを贈らない訳にはいかないと思う。
ただの自己満足ではないのかとひねくれ者が言うとしよう。確かにそうかも知れないが、しかし自己で満足も出来ないプロポーズほど、意味のないものはない。そう思う。
出来れば直接渡したい。しかし距離がそれをさせない。出来れば直接声で届けたい。しかし距離がそれをさせない。
俺達はまだまだ所詮はただの子供で、その子供が発する愛の未来を契った言葉ほど馬鹿馬鹿しいものはない。
ならば二人大人になってそれから言っても遅くはないと思うのだ。時を積み重ねて経験を生んでそれでも俺達変わらないのならその後に待ち望んだ言葉を言うのも悪くはないと思うのだ。
だからせめて今は言葉を伝えられないかわりにただお前に花束を贈ろう。真っ赤な薔薇を160本。毎年10本ずつ増やしていってこの花束の薔薇の数が200本になった時、その薔薇を抱えてお前を迎えに行く事にしよう。
どんなに寒い言葉もどんなに痛い言動も全て全て薔薇に乗せてぶち撒ける。そうしてやっと俺は全てに満足する事が出来るのだ。
だから今は全てを我慢する時であり耐える時。溢れそうなこの思いを閉ざして全ては未来へ持って行く。
ただただ綺麗な薔薇の花束と短いメッセージにありったけの気持ちを込めて、いざ、お前の元へ。
届け、愛情。
終
(岳人!家に超すげぇ薔薇が届いたんだけど!)
(は?誰から?何て?)
(ハッピーバースデートゥーハニー、バイあとべ!)
(うわ!さっびぃい!)
090505
一応留学中跡部と日本にいる遠距離な二人設定。
ロマンチスト過ぎる跡部。そんな跡部にときめいちゃうジロー、そんな感じの二人が好き。
薔薇の花言葉:愛情