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垣根くんが健気に自慰してるだけ。第一位が酷い人。












すぐ傍にある赤い眼は俺を見ない。

「あ、は、はぁ…ん、」

家主の印象をそのまま踏襲したようなそっけない部屋の中、響いている濡れた音と自分の声。狂った春の 猫みたいにひっきりなし、喘ぎ続けてどれくらい経っただろう。自分の性器に絡む指を見つめながら思う 。何の特徴も見とれないつまらない自分の指。これがあの白くて滑らかな肌をした、骨の浮いた綺麗な指 だったら。目を閉じて思い出す。いつもアイツがするみたいにぎゅっと強く握れば、くちゅりと音を立て て先端から粘液が滲んだ。ああ、足りない、足りない、自分でなんて感じるだけで満たされる筈がない。 この手がお前だったら。けれど今彼の手に握られているのは無機質な黒い端末。ひどくつまらなそうではあるけれど、それでも眺めているということは俺よりもアイツの興味をそそったという事なんだろう。お前のために床にへたりこんで自慰をする俺、よりも。はあと熱い息が零れる。見上げた先の整った顔の涼しそうな白い頬にこの熱を、少しでもうつしてやりたくて、わざと音を立てて指を舐めたあと自分の胸に手を伸ばす。手探りで突起をあて、つねったりひっぱったりして自分を追い詰めてみる。高くなる自分の声。拙い自覚はあった。けれど確かな刺激と、アイツが目の前にいるという状況が確実に快楽とリンクする。
シてェならソノ気にさせてみろよ。そう言って本当にそっぽを向いた冷たい情人が、今度こそ振り向いて くれるかもしれないという淡い期待とともに。

「アアあ、ア、はぁ、な、オ…イ、んっ、はぁ…」

耐え切れず、途切れ途切れに話しかける。ダルそうにソファに腰掛けるアクセラレータは、相変わらず端末のディスプレイを見つめたまま。投げ出されたすらりと長い足にさえ欲情したことを隠して、返事をくれない唇を俺は見つめてる。

「お、れが…ん、こんな、なってんの、に、はァ、んあ、な余裕、なんだよぉ…ぁ」
「あァ?」
「こっち、ぁ、見も、しね、でぇ、ん…は、」
「んだァ、見てほしかったンかよ変態さン」
「お前があっ、言ったんだ、ろ」
「オナニーしろなんて誰が言うか、てめェが勝手に始めたんだろうが」
「あ、あっ、ァ、」

アイツの声。性器を擦る右手が早くなる。ちらりと視線が寄越される。やっと見てくれた。息が上がる。上気して熱い頬を汗が流れていくのが分かった。辛うじて袖が通ってるだけの肌蹴きったシャツだけ纏って、惚けきった顔で乳首を弄りながら性器からだらだらと粘液を零す俺の姿はどんな風に映ってる?先端を親指でぐりぐりと刺激しながらソファに座るアクセラレータを見上げる。はあと溜息。ああでもお前がお前が俺を見てくれるなら。

「アアあ、は、あ、ああ、おま、アっぁ、も…、う、んっ」
「ああイけイけ耳障りなンだよメスイヌが」
「あ、ああああぁ、ァ、ん、はあ、あ」

生暖かい精液が指に腕にかかって床に落ちる。イった瞬間、脳裏のお前が後ろから俺を抱きながら耳元で呟いた。言葉はいつも同じ。目の前が白くかすむ。アイツはまだ俺を見てるだろうか。



「…、はぁ、はぁ、…は、」

達した開放感と疲労感に、耐え切れず俺の体は床に崩れ落ちた。唾液が零れるのもそのままに、浮かれた熱を吐き出す唇。ぱたんと乾いた音、不意に空気が動いて、視線を上げればアクセラレータの顔が、あの綺麗な赤い眼がすぐ傍にあった。
そのまま近づいてくる。いつも見惚れる、すんと通った鼻筋が俺の火照りきった頬を掠める。

ちゅ、と、キスがおとされた。

「あ…」

呆然とする、しかない俺に完璧に整った顔が微笑みながら離れていく、代わりに伸ばされる白い掌。くしゃりと頭を撫でられる。待ち焦がれたあの手が、俺に触れている。もっと触ってほしい、抱きしめてほしい、めちゃめちゃにしてほしい、背中をぞくりと快感がかけて指先から熱がともる、

「アクセラレータ、」

けれど、一通り撫で終えたその手は、そのままするりと俺から離れていった。え、と、状況が飲み込めなかったのも一瞬。そういえばコイツはいつだってそうだったと思い出したのが一瞬。

「じゃァ俺は仕事だから、どっかの誰かみてェに暇じゃねェんでな」

あァそれから、色も形も薄い唇が歪む。ここで甘い言葉の一つでも吐き出せば良いのに、コイツに限ってそんな事はありえない事、誰よりも俺が知っている。ああほら、やっぱり。

「床。見事に汚してくれやがって。ちゃぁンと舐めとけよ?」

あは、じゃあな。最後まで嘲るように笑って白い背中が扉の向こうに消える。ばたん、聞こえた音は閉まる音でひらく音。アイツとの遠い、遠い、遠い、距離。唇を撫でた。自分のつまらない指先にあの柔らかい甘い感触を思い出したくて、だけど出来る筈がないことも知ってる。

「好きだよ、おまえが」

誰もいない部屋の中、ぽつんと落ちた。冷めていく熱。醒めない熱。こいしさに息が苦しくなるのは絶えずたえずに。声がせめてお前に追いつけばよかったけど。
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