「うー…!さっぶいなぁ…!」

スタッフさんに借りた厚手のコートにすっぽりと身を包んで出番を待つ。隠れきれなかった指先がかじかんで上手く動かない。はあ、と息を吐いて僅かな暖をとってもまた直ぐに冷たくなる。

おはやっほーニュースはいつも早朝生放送だから、もう随分長くやっていて慣れているはずなのに。今年の冬は一段と厳しいみたいだ。ぶる、と体が震えて慌ててコートの前を閉めた。


「ハヤくんお鼻真っ赤だよぉ」


優しい声に名前を呼ばれて振り向けば同じコートを羽織ったなまえちゃんがいた。忙しそうにしていたから話し掛けるのを渋ったのだけれど、もう手が空いたのかな?嬉しくなってふにゃりと頬が緩む。


「なまえちゃんこそかわいいお鼻が真っ赤になってるよー」

「え、うそ、やだなぁ恥ずかしい」

「今日はいつもより寒いからにゃー…ちゃんとあったかい?いっぱい着込んで来た?」

「ハヤくん心配しすぎ!言うほど寒くないから大丈夫だよー
 それよりハヤくん衣装だけじゃ寒いでしょ?はい、カイロあげる!」


ぽんと差し出されたカイロはもう少し暖かくなっていて、彼女の気遣いに感動した。きっとなまえちゃんはいいお嫁さんになるなぁなんてふわふわと思いながらそれを受け取る。いや、受け取ろうとした。


「やっぱり冷たい…明日からはハヤくん用に手袋持って来ようね、」


彼女の柔らかな体温が流れ込んできてじわりじわりと指先が熱を持つ。僕の手を包み込む彼女の手はすごく温かくてちょっぴり驚いた。でもそれ以上に、手を握られているということの方が驚きだ。長い睫毛を伏せながら彼女は笑った。恥ずかしいけど嬉しい、温かい。手袋なんかいらないから明日もまたなまえちゃんに温めてほしいなぁ。そう口に出すより先に別の感情で頭がいっぱいになる。頬が熱い!


「なまえちゃん…可愛すぎるよおおお」

「ふふ、ハヤくんの方がかわいいよぉ」


手だけじゃなくて体とか心までぽかぽか温かい気がする。やっぱりなまえちゃんはすごいなぁ。本番の声がかかったら手を離さなくちゃいけないと思うと少し寂しいけど、すかさずなまえちゃんが また明日もね って言ってくれたから寂しい気持ちなんて何処かに行ってしまった。彼女にはなんでもお見通しだ。だいすきだよ、なまえちゃん、体温と一緒に僕の気持ちも、伝わるといいな。

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