ポリゴン | ナノ



  
ガールズトーク



「普段のテツ君、どんな感じ?」
「ああ、別に変わらないよ。カゲ薄いのも淡々としてるのもツッコミ辛いのも」
「仲いい女の子とかいるのかなっ」
「うーん。わたしの友達の子とは仲良いって言えるんじゃないかな」
「えー!どんな子!どんな子!?」
「バレー部の、関西弁が可愛い子」
「やーん!ヤダヤダヤダ!やっぱ誠凛に転校するー!」
「でも普通に友達だけどね」
「そう?それなら……うーん……」
「……どこがいいの?」
「ギャップかなー」
「ギャップ?」
「まあ普段はあんまり目立つ人じゃないけど、試合だと凛々しくなるじゃん!」
「まあね。あの見えないパスに驚く観客を見てるとタネを知ってる自分が少し得意げになっちゃう感じ」
「そうそう!あとね、周りのことよく見てるっていうか……気付いてくれたの」
「気付いた?」
「アイスくれたの!」
「は、はあ……?アイス?」
「もー今思い出してもキュンってしちゃうんだから!──あ。水無さんは?好きなタイプとか。まさかテツ君じゃないよね?」
「そこまで心配しなくても……。わたしは──そうだね、もう少し分かりやすく男らしい人がいいな」
「と言うと?」
「んー……グイグイ引っ張ってくれるっていうか、ちょっとぐらい強引なのがいいっていうか。でも笑顔が可愛かったりすると」
「ふーぅうん?」
「……なに」
「いやー、タイプって言うよりは明らかに誰かを想像して答えてる感じだなーって思って」
「そ、そんなことないしっ」
「あー!赤くなってるー」
「なってないっ!」
「水無さんってカワイーよねー。笑ったらもっと可愛いのにー」
「ほっといて」
「ていうか水無さんも分かってんじゃんギャップ!要するに、オレサマ系に子供みたいな笑顔が水無さん的ポイントなんでしょ?」
「ポイントっていうか」
「同じ恋する乙女同士!頑張ろーね!」
「してないから!恋!」
「あっ、メアド交換しよー?」
「…………」

「水無さんさ、笑った方が可愛いって言われない?」
「は?」
「あるいは、笑顔が好き!とか」
「言われないけど」
「ウソ!そんなムスっとしてるより絶対笑った方が可愛いのに!ねえ笑ってよー」
「笑わないってば。ていうか桃井さん、ボリュームを下げようか」
「あっ、いっけない」
「……何しに来たの?」
「え?もちろん、テツ君に会いに」
「その『テツ君』、あそこで浮かんでるけど」
「テツくーん!死なないでー!」
「え、死ぬの」
「相変わらずだなーテツ君」
「体力ないよね。腕力も脚力も跳躍力も色んな力が足りないよね」
「うん。でもカッコイーの」
「そんなもんか」
「そんなもんだよ」
「カッコイイ、ね。井原先輩に言ってあげたら嬉しくて嬉しくて喜んで死ぬかも」
「死ぬの!?」
「死ぬよ。いつも何かと男バスと絡めようとするんだもん。今日だって」
「あ、そういえばさ。水無さんは何でストバスなの?女バスじゃダメなわけ?」
「ダメなわけ。わたし、したい時にしたいだけバスケをしたいだけだから」
「ああ。だから同好会なのね」
「うん。ゆるゆるだしね。田原なんて学校自体サボりがちだし」
「私、ここにいるバスケ部の人のことは全員知ってるつもりでいたから、井原さんや水無さんいて驚いた」
「練習混ざってるしね」
「でも、ふぅん。三人が色々手伝ってきたんだ……」
「わたしを頭数に入れないでね」

「水無さんって強いの?」
「それ本人に言う?」
「アハハ」
「黄瀬くんて知ってる?」
「もちろん!マネージャーでしたから」
「そりゃそうか。黄瀬くんには負けたり勝ったり負けたり」
「え、互角!?」
「負けのが多いよ。ていうかそもそも本気を出してもらえてるかどうか……それに実際試合みたいな長い時間で戦ったら、やっぱりわたしは勝てないと思う」
「へぇー……。でも、勝敗競ってるんだったら手加減してるわけじゃないと思うなぁ」
「だったらいいな」
「きーちゃんと知り合いなんだ?」
「練習試合したしね。それ関係で知り合ったの」
「へぇ」
「井原先輩がね」
「あー。友達多そうだよね」
「見ての通りだよね」
「アハハッ!リコさんに怒られてるー」
「日向先輩も井原先輩には殊更容赦ないからね」
「テツくーん!頑張ってー!」
「……また浮かんでる」

「桃井さんはバスケしないの?」
「あ、自分でってこと?」
「うん。なんか運動も出来そう」
「そんなイメージなんだ」
「オーラが」
「オーラ!ううん、私は側で見てるのが一番楽しいな。それで選手のクセとか分析したり」
「相田先輩みたいな?」
「うん。だから今の高校でもマネージャーやってる」
「なるほど。今日は偵察?」
「アハッ!違うよぉ。今日はテツ君に会いたかっただけー」
「次、誠凛と当たるんだっけ?余裕だねぇ。強いんだ?」
「ん?んー、あはは。余裕っていうか、でも、そーだね。強いね」
「そっか」
「試合。水無さんも観に来るの?」
「ううん。先輩達は行くけど」
「えー!何で?水無さんも来ようよー」
「放課後だしね。学校終わってから観に行くほど親しくないし」
「えー。じゃー私観に来てよ」
「出ないのに?」
「出ないけど!」
「ふーん」
「な、なんか水無さんって子がわかってきたかも……!」
「わたしも、桃井さんって子がわかってきたかも。黄瀬くんと似たタイプだね」
「えー!?やだーきーちゃんとー!?」
「……黄瀬くん可哀相じゃない?」

「こういう練習って面白いね」
「ああ、そうだよね。面白い」
「このメニューはリコさんが?」
「そうだね。カントクだしね」
「凄いよねーリコさんって。数値が『視』えるんでしょ?」
「わたしから『観』たら桃井さんも凄いと思うけどな」
「え?」
「こうやって話してる間にも、どんだけのデータが組み立てられてるんだろう」
「…………」
「良かったね。観に来たのが、偶然にもプール練で。観やすいでしょ?」
「まあ……ね」
「優秀なマネージャーだ。えっと、高校どこだっけ」
「桐皇だよ」
「強いんだ」
「強いね」
「まあ頑張れだね」
「どっちが?」
「どっちも」
「クールだなぁ」
「よく言われる」
「でもいいの?誠凛応援しなくて」
「同好会の先輩が部員と友達で、隣の席の男の子とその前が部員。それだけの繋がりだよ」
「ふーん?──あ!ねえ、好きなタイプの話に戻るんだけど」
「戻るの?」
「ひょっとして、火神君って好きなタイプに当て嵌まるんじゃない?」
「火神くんが?まさか」
「ナシ?」
「ナシ。あーいうのはね、子供っぽいって言うよりは阿呆って言うんだよ。さっきだって電話で散々」
「あ!電話の相手、火神君だったんだ」
「色々とバカを言うから大変なんだ」
「彼、足大丈夫?ケガしてるんだよね」
「早いね、情報」
「へへへー。それが仕事ですから。で、大丈夫そう?」
「本人に聞いて」
「クールだなぁ」
「よく言われる」
「アイスだなぁ」
「よく言われる」
「アイス食べたくなっちゃった」
「それは初めて言われた」
「ホント?やった」
「喜ぶところなの、それ……」

「コラそこ見学二人組!女子高生トークは休憩時間に!」
「すいまっ」
「せーん」
「…………」




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