■ 結果とお部屋


「しーんすーけくーん……」

ノックもなしに家主の部屋のドアノブを回し、勝手に部屋に上がり込む。ベッドに寝転んでこの腐りきった世の中を憂いていたたそがれていたらしい晋助がわたしの顔を一目見るなり「人間のカオじゃねーな」と称してくれたおかげで、更にテンションはガタ落ちである。

「オイオイオイ。テメーの親は無理くり住み着いた家の家主の部屋に許可なく入って来てバケモンを見せて恩返ししろとでも教育なさったのかァ?」
「そんなにヒドい……?顔……」
「この世の生きモンじゃねーよ」
「うああああああああ」
「ち。どうやらバイオハザードの世界へトリップしちまったみてーだ」

顔面と奇声にも似た叫びをもってして例の中二な結論に行きついたらしい晋助は「こいつは厄介だぜ。面倒くさがらずにウィキっとけばよかった」どうやらバイオハザードは未見らしい。明日帰りにツタヤで借りてきてやろうと思った。

「……で。何の用だ」
「うああああああああ」
「オラ。さっさと話せ。何が未練だ。何が手前の魂をこの地へ縛り付けている?」
「なんか自縛霊っぽくなってない?」
「あ?似たようなモンだろーが。とっとと話しやがれ、この自縛霊」

そうか、そんなにヒドイか……。
ガクッと肩を落とし床にへたり込む。ちょっと触れただけで高級品が明らかなカーペットの肌触りが、このシンプルな割に無駄にセレブ感漂う部屋に妙にしっくりきている男子高校生が、いっそうわたしをみじめにさせる。

「どうせ。どうせわたしなんてっ……」
「ああ。また落ちたのか。ホント、マダオだよなァ手前はよう」
「マダオってなに」
「まるで受かる気配のないダメな女」
「うああああああああ」

開いたままにしてあるスマホのウェブページはナビのメール画面で、『末筆ながら、斉藤さんの就職活動の成功をお祈りしています。』が特徴のいわゆる『お祈りメール』。腐敗だの腐っただの、つまりおんなじことしか言っていない現実見てるんだか見てないんだか色々危なっかしい立ち位置の男子高校生にその画面をグリグリと押しつける。

「お前さんもなァ、就活生になったらなァ、この苦しみがわかるんだよォォォォ!!!」
「は……知らねーな、そんなモン」
「テメーそんなナメた口きいてられっのも今のうちだけなんだからなァァァァァ!!!」

「なんでこう……わたしってグループ面接ができないんだろう……緊張してるつもりはないのに……文章だって考えてるのに……うまくアピールできない……あああわたしのとりえって何だろう……」
「あー、そうさなァ……。オメーの作っただし巻はうめーよ。世界最高水準だ」
「言えってか?それ面接で言えってか?」
「知らねーよンなこたァ。後はテメーで考えろ」
「なにちょっといいアドバイスした人みたいになってんの?なに颯爽と立ち去ろうとしてんの?ここ晋助の部屋だよ?」

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