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「じゃあ最初は何買いに行く?」

朝飯食べて着替えて歯磨いて寝癖整えて電車で少し遠出をすれば。電車の窓から見える風景に釘付けになっているマサキを横目で見ればくすりと笑い。電車で約30分。着いた大型ショッピングモールの前でそう訊ねると霧野さんに任せます、ってまたそれだけ。まあしょうがないかと半ば諦めかかり乍ショッピングモールの中に入る。

中に入ると蒸し暑かった外と比べて随分と冷えていて鳥肌が立つくらい。マサキもそう感じたのか手で自分の腕をさすっている。でもそれよりも気になったのが、この人の量。辺り何処を見回しても人、人、人。マサキは携帯を持っていないからはぐれたら怖いな。だからって手繋いで歩くのもマサキにとって恥ずかしいか。ここは俺が注意して見ておくしかないどそう決めればマサキ行こうって、え、マサキ?

……おいおい嘘だろ注意しようって決めた傍からいきなりはぐれちまったよ。焦りながら周り見回すと後方で人の波に飲まれる見覚えのある青緑の髪色。まったくあいつはって半分呆れながらもすいませんって、人の波を掻き分けてゆけばマサキの腕をぱしりと掴み此方に引き寄せる。

「大丈夫か?」

マサキは人の波がよほど怖かったのか顔面蒼白であわあわとこちらを見詰めている。人混み慣れてないのかなあと思いながら気を付けろよとだけ言い足を進めようとしたその時誰かに腕をぐいと引かれる。引いたのはやはりマサキで。

「あの、はぐれたら厄介なので、…その、」

やや俯きがちに口を小さく開ければ、手握っててもらっても大丈夫ですか?って。ああ、こういうの嫌じゃないのか。意外だな、手繋ぐのとか人肌と触れ合うの極端に嫌がる奴だと思ってたが。

「ん、…ほら、手」

頼まれたんなら仕方がない。俺はマサキにはいと手を差し出した。するとマサキもありがとうごさまいますって言って差し出された手を握る。あ、あったかいとか思っちゃったりしてはなんだよこれ恥ずかしいって。でもマサキも手のひらの温度はとても心地が良くてほっとする。

じゃあまず服から買いに行こうかって俺達は人混みの中を歩き始めた。

「ええ…と、エスカレーター…」

周りを見回せば上の階に行くのには欠かせないエスカレーターを探す。丁度俺達が立っていた真後ろにエスカレーターがありそれに乗って上を目指す。3階の洋服売り場で降り、マサキの服選びに約1時間いろんな店を転々とした。

ー ー ー

「ふう…疲れた」

手に多種多様の紙袋を持ち休憩所のベンチに二人腰を下ろしていた。マサキも相当疲れた様で来たときよりも顔色が良くない。かなり金使ったしマサキも疲れてるみたいだし今日はここまでで帰ろうかな。そうマサキに提案すればマサキも無言で頷いてくれた。じゃあ帰るかってまたマサキの手握り立ち上がり足進めていくといきなりマサキがぴたりと足を止めた。どうしたって聞こうとマサキ見れば視線が左側に。捉えられた視線の先追えばその先にはアイスクリームショップ。

「…食べたいのか?」

相手ちらりと見ながらそう訊ねれば無言でこくりと頷くマサキ。しょうがないなって残り少ない財布の中身確認しながらショップへ向かう。後ろからちょこちょこと付いてきたマサキがバニラがいいて告げるのでバニラ二つ、と店員のお姉さんに告げると一分ほどでバニラアイスが俺の目の前に二つ。早いなあなんて思いながらお金を渡し受け取ったアイスの一つをマサキに渡すとありがとうございますと。近くの室内ベンチでアイスにかぶり付くマサキに思わず微笑む。

「アイス付いてる、」

がっつき過ぎる相手の顔を見れば、頬にアイスくっ付けて。なんか子供みたいだなぁって半分呆れながらもマサキの頬に付着したアイス指で掬ってやりそのままアイスが付いた指をぺろりと舐める。

「っ…あ、わ…」

うわマサキ照れてる可愛い。顔赤く染め上げるのを見ればくすくすと笑ってしまい、すると笑うなって罵声が飛んできた。はいはいって受け流すもムキになるマサキは本当に可愛くて頬が緩む。そんなこんなでお互いアイスを食べ終わり、再度ありがとうございますってお礼言ってくるマサキの手掴めば帰ろうか、って。今日でかなり距離縮まったなって嬉しくなりながらその場を後にした。






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