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白石の恋


最近、なまえちゃんがため息を吐いてボーッとしている事が増えた気がする。
何か悩み事があるようだ。

「俺には分かる…、なまえちゃんは今俺に好きな人がいるかどうか考えて悩んでいる…!」

白石の独壇場はわりといつもの事だが、アシリパさんが冷めた目をしてそうっとこの場を離れて行った。俺もそれに続いて立ち去ろうとしたが、白石がそれを許さない。うざい。

「寝言は寝て言え白石、どこから来るんだその自信は」
「だってだって〜、最近2人でよく話すようになったし、よく目が合うようになったし〜。その内さぁ、白石さんって好きな人いるんですか?なんて潤んだ瞳で聞いてくるようになるじゃん?」
「ええぃ、そういう事は万が一にでもなってから考えろ。くっつくな、ていうかお前が一方的に好意を持ってるだけだろうが」
「そんな事言って杉元ぉ、焦ってるんじゃないのぉ?」

ただただ面倒くさい奴だ。皮を剥いで狐の餌にしてやろうか。

「あれ、2人とも肩組んで何の話してるの?」
「噂をすればなまえちゃん!ねえねえねえ、なまえちゃんはさぁ、今好きな人いる?てゆーか俺一途だからもう俺しかいないよね!」
「やめろ白石!必死すぎてただの痛い奴にしか見えないぞ!」
「へ?何がどうなって、好きな人?なになに恋話?」

白石がなまえちゃんの手を両手で握りしめて、なまえちゃんの目を真っ直ぐ見つめる。

「俺、本気だから。なまえちゃん、俺と結婚を前提に付き合って下さい」

あからさまに困った顔をして、俺の顔を見てくるなまえちゃん。はっきり言ってやれと俺も目で訴えた。

「あの、白石さん。ごめんなさい、私好きな人がいるんです…」

なまえちゃんがそう言った途端に、白石の顔が一気にこの世の終わりのような表情になって、足が生まれたての子鹿のようにプルプルし始めた。ざまあ。

「好きな人俺じゃないの!?あんなに2人で過ごした日々は嘘だったの!?」
「人聞きの悪いこと言うな白石!なまえちゃんちょっとコイツ熊の餌にしてくるから」
「やめて杉元耳痛い!でも俺そんなに簡単に諦めないから!なまえちゃぁ〜ん!」

あーだこーだ喚いている白石の耳を引っ張りながらその場から離れる。
1人残されたなまえちゃんの元に、アシリパさんとキロランケがやって来て、彼女はこっそり忍び笑いをしてることだろう。
俺もアシリパさんもなまえちゃんの好きな人とは誰なのかはなんとなく分かっている。
彼女が想っている相手は誰なのか、鈍い白石もその内いつか気付くだろう。

彼女の恋が実らなくても、俺もアシリパさんもそれを見守るだけだ。


2016.08.10.
2018.04.10.
引越、加筆修正。

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