ss12 後夜祭と最高のプレゼント | ナノ 後夜祭と最高のプレゼント


カチ、カチ、と時計の秒針が、気になりだすとうるさい。
きっとその時計の短針は、もうてっぺんを過ぎていて、カレンダー的には秋が始まっているはずだ。
“わたしの日”は終わり。
まだぼんやりとする頭で、そんなことを考えていた。
楽しかった。すごく、すごく。
ニコニコ顔のリンちゃんに手を引かれて入った、色画用紙を切り抜いて作られたメッセージやキラキラのモールで飾られたいつもと違うダイニング。
どれだけ時間がかかったんだろう、メイコお姉ちゃんとマスターが作ってくれた大好物の料理ばかりが並ぶ食卓。
リンちゃんとルカちゃんが作ってくれたフルーツがいっぱいの手作りケーキ。
そして、最後に飲んだ赤ワイン。ブドウジュースのようで、その実全然美味しくないそれを飲み干してからの記憶が、なんとなくない。
みんなの声がぼんやり聞こえて、パタパタ走るリンちゃんの足音だけがはっきりと聞こえて、あったかい背中はきっとマスターで。
じゃあ、ここはリビングのソファか。と、やっと冴えてきた頭が自分の置かれている状況を導きだす。
自分の上の毛布をかけなおそうと身じろぎしかけたとき、すぐ隣から声が聞こえた。
「あのね、ミク姉。いまあたし、すっごいドキドキしてるの。こうやって2人で寝るの、初めてじゃないのにね」
くすくすと笑う声が、大好きな声がする。
薄目を開けたら、暗やみの中の狭い視界にすっと濃い影が落ちる。
ますますわたしは身動ぎができなくなって。
「大好き、ミク。あたしの隣にいてくれてありがとう」
そして、頬にやわらかくてあたたかい感触。
きゃあ、なんてかわいい声がして、毛布がごそごそいう音。
今なんて言った?
大好き?
それは、わたしも、だけど……。
ミク、って、呼び捨てで呼んだ――?
身体はガチガチに強ばって、何が起きたのか理解できた時に声をあげなかった自分をおもいっきり褒めてあげたい。
わたしの日は終わったはずなのに、思いがけず最高のプレゼントをもらってしまった。しかも、くれた相手は、わたしが気付いていることに気付いていないらしい。
時計の秒針なんか絶対敵わないくらい自分の心臓の音がうるさくて、隣からかわいい寝息が聞こえる頃になっても静かになってはくれなかった。

fin.

あとがき→





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