ss3 繋がれた獣 | ナノ



部屋には私とリンの二人きり。部屋の中央の一客の椅子に座る私と、真正面に立って見つめるリン。
いつもと違うと感じる事は、私がリンを見上げていること、そして、私の両手は後ろに回され錠がかけられていること。
「……リン? この手錠は何かしら?」
「えへへ、捕まえた。マスターにもらったんだ」
誘われるがままに部屋に入り、言われるがままに椅子に座り、素直に手を差し出した。
失態だったと片付けるのは簡単だが、この向日葵のように邪気の全くない笑顔を咲かせる女の子に拘束されるだなんて、誰が予想できただろうか。それが他の者の入れ知恵だとしても――。
「マスターに、ね……。ところでリン、これはいつ解いてく」
言い終わるよりも早く、覆い被さるようにリンの笑顔が近付き、唇が触れた。
「!!?」
限界まで見開いた瞳に黄色が映ったのは一瞬。後ろに回りこんだ姿は、満足に振り向けない今の体勢では捉えきれない。
見えないところで、手首に、甲に、親指の付け根に、柔らかくて温かいものが触れる。きっとそれは先程自分の唇と熱を分かちあったものと同じもの。
最後に小指に触れたのは、それまでとは違う、熱く濡れた感触。刹那に舐めあげられたのだと理解し、鳥肌とともに快楽が体を駆け上がる。
見えないことで想像力がかきたてられ、マダタリナイモットホシイと自分の中の飢えた獣が唸る。
「リ、ン……?」
名を呼ぶ震えてかすれた自分の声は、聞く人が聞いたらまるでねだっているように聴こえただろう。今までこんな声も出せることに、自分でさえも気付かずにいた。
「いつも、めいねぇとマスターが二人占めしてるんだから、これくらいいいよね? さて、マスターに報告しなきゃ」
口付けの意味を問う前に、バタバタと部屋を出ていってしまう。
「え? え!?」
「マスター、るかねぇ捕まえたよ〜!」
元気に報告する声が聞こえてくる。きっと、先程と全く変わらない笑顔でマスターのもとへ向かったのだろう。
「GJ! 今行く!! 今日こそ、自分が攻めだ!」
「ずるいマスター、あたしも攻める!」
「何だと!? リンっ! MEIKOを阻止するんだ」
「あれ、リンはあたしの味方よね? 二人でルカにいろいろしたいわよね?」
なんか、いろいろ怖い。今の発言も、ドアをブチ破らんばかり入ってきた焦がれる感情と期待の熱とがまじった4対の視線も、その中の後ろに見えるもの言わぬ緑色の影も。
「ご、ごきげんよう。マスターにお姉様に、ミク…?」
次の瞬間には、マスターに体当たりに近い抱擁をうけ、お姉様に後ろから頭を抱かれ、リンに首のあたりにぶら下がられ、ミクは足下に跪いた。
想像に難くない未来が脳裏をちらつき、早くも私は意識を手放しはじめている……。


To be continued...?


あとがき





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