ワールド(アナザー)イズマイン




何だろ、やっぱりまだ引きずってるんだと思うんだ。…なあ、なあ、

絶対に、もう俺の傍から居なくなるんじゃねぇよ。これ、命令な。




「そのチョコよこせっ」

「うおあっ!?、びっくりしたぜよ…普通に言いんしゃい。まだちゃんとあるから」

「食わせて」

「ん」


ぱくりと差し出されたチョコを食えば、目の前に居る潤斗は少しだけ眉をさげて苦笑い。その表情にちょっとだけ苛っときたから、意地悪に指を噛んでやった。


「みぎゃっ!?い、痛いナリ…」


うるせぇよばーかっ。





▲▽▲▽▲


「そう言えば、最近色々言ってくれるようになったんじゃなか?」

「ん?」


今日は部活が珍しく休みの日。無理やりにこいつを連れ出して二人で一緒に帰っていたら、途端にそう言われた。


「急に我が儘になったってか?」

「んーん、違う」


おまんが素直になってくれたみたいで嬉しい、と言って頬を染めてはにかむ潤斗。…俺の方が照れるんだけど。
照れ隠しに「黙れ」って言ったら、今度は苦笑いで「はいはい、お姫様」だなんて返してきた。ふざけんな誰がお姫様だ。


「邑様、だろ」








俺達がいつも使う通学路には、交差点が1つだけある。そこは車通りが多い大きな交差点。

いつもここを通ると思い出すのは、こいつが押されて、俺が車から庇ったあの日の事。

あの日、こいつを庇った俺は何日も意識を失ったままで。意識を取り戻したら、こいつは飛び降り自殺してしまった後だった。


「っうわ、」

「あ」


ぐらりと俺の方に傾く潤斗の体。
しまった、つい…。


「…轢かれる、危ねぇ」

「………」


苦しい言い訳だったかもしれない。実際、こいつは今、轢かれそうになんてなってなかったし。

でも、でもな。
やっぱり俺はまだ怖ぇんだよ。お前がまた俺の横から居なくなっちまうんじゃねえかって、すっげえ心配になっちまう。


「…ありがと、邑」

「……おう」


控え目に繋がれたその手を、離すまいとしてぎゅっと握る。
離さない、絶対に。もう俺の傍から居なくなるのは無しだ。

もう、消えないで。





(消えないよ。傍に居る。だからもう、そんな顔しないで?)