「10代目、こちらにサインを」

「そこに置いといて」

「分かりました」


高校時代に出会い、お互い惹かれ合って、私達は付き合い始めた。
ねぇ、綱吉。

私達…恋人、だよね?





- - - - -


1日何十回以上ため息をつくのが日課になっていた。前は笑顔が絶えなかったはずなのに。


「…いい加減にしてよ。鬱陶しい」

「何が?」

「ため息」

「……」


私自身(かなり)無意識だからどうしようもないんですが。それに好きでため息ばっかりついてるんじゃない。



暗い路地を出来る限り足音をたてず進む。前方に数人の人影を見つけた。


「名前とりあえず集中しなよ」

「りょうかーい」


銃の安全装置を確認し外した。
ドン、と放たれた銃弾がを一人を撃ち抜いたと同時に戦闘が始まる。















脇腹が熱い。


「何やってるのさ」

「ごめん」


呆れた表情を浮かべ深くため息をつく恭弥。一瞬、隙が出来てしまった私は左の脇腹に銃弾をくらってしまうが、その後すぐに恭弥が全ての敵を片付けてくれたので急いで応急処置が出来た。


「さっさと帰るよ。あの医者に見せないと」

「そうだね…ありがと恭弥」



恭弥に背負ってもらい、本部に戻る。背中から伝わる揺れが私を意識を簡単に奪っていった。





- - - - -


「また無理しやがって」

「いや…。今回は無理と言うより油断と言うか、何と言うか」


ったく…何回俺の世話になれば気が済むんだ、とぶつぶつ言いながら片付けを始めるシャマル。


「まぁ、この先ずっと?」

「あ?なんだって?何か言ったか名前ちゃん?」

「何もないです」

「女の子が体に残るような怪我してんじゃねぇよ」

「うーん、問題ないんじゃあ…」

「あ゛?」

「すみません」

ふざけんなテメェ、みたいな凄みのある目つきで睨まれた。言いたい事は分かるけど…仕方ないよ。この世界に足を踏み入れた瞬間から覚悟していた事だし。


「いいんだよ別に嫁に行く予定ないし。それに…この傷は私が頑張って来た証じゃない」

「……ボンゴレの坊主がいるだろ。それと言っておくが、女の子に名誉の負傷はないからな」


それはないな、と苦笑した。





- - - - -


だってほら。


「可笑しいよね」

「そうですね!ね、京子ちゃん」

「本当だね」


廊下でばったり出くわした10代目に、さっきの任務の簡易報告をしていたら京子とハルがやって来て話始めた。二人も高校時代からの付き合いになり、すごく仲良くしてもらってる。
(甘い物好きな気の合う友達)



ぼーとしながら三人を見ていたら、ふつりと浮かんできたドロリとした黒い感情。


―そうよね、
私はそんなふうに可愛く笑えないもの。
―そうよね、
私は可愛くもなければ美人でもないもの。
―そう、よね。
こんな傷だらけの体の私なんかよりも…、
二人の方が良いに決まってる。




このドロドロした醜い気持ちの私がそばにいてはダメな気がして。これ以上この場には居れなくて。


「それでは失礼します」

「ああ」

「あれ、もう行っちゃうんですか?」

「後で一緒にケーキ食べようね」

「うん。また後で」


(笑える訳ないじゃない)





青 き 影 は 死 ん だ の だ





ほら。
だって彼は、私に対して
ひとつも笑ってくれない。








御題『壊れゆく10題』より
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