傷付いていく貴方なんて見たくなかった。少しだけ幼さを残した優しい笑顔でずっといて欲しいの。祈る事しか出来ないけど、願い続けてもいい?







「さて、武器は全て床に置いて頂きます。全てですよ」


戸惑っている守護者を後目に、沢田綱吉は自分の武器を大人しく床に置いた。隠し持っていた銃も、彼の武器でもあるグローブになる手袋も。それを見た守護者達も次々と己の武器を置き出す。


「こんなに上手くいくとは思いませんでしたよ、ボンゴレ10代目!」
「言われた通りにしました。名前を返して下さい」


男は笑う。
このまだ幼い若きマフィアのボスに。優し過ぎるのも考えものだと。


「止めて綱吉!私は、私は!」
「大丈夫だよ」


こんな時にそんな風に笑わないで。私が望んでいた大好きな笑顔だけれど、こんな場で見たくないよ。


「では、そのお気楽な頭をすっきりさせてあげましょう」
「やめて!」


銃口が綱吉の額を捉えていると分かった時、銃を持った相手の腕に飛び付く。が、やはり力の差で突き飛ばされてしまった。


「今までの恩を仇で返すつもりか?…まあいい。ボンゴレ10代目、一つ良いことを教え差し上げます。ここにいる貴方が愛した女は」
「お願いやめて!」





「貴方の懐に潜り込ませるために私が差し向けた、スパイですよ」


高笑いする男を無表情な瞳で見つめいた綱吉は、ふと口元に笑いをこぼす。


「知ってましたよ」


ああやっぱりと思う自分がいた。この人は何かしら気付きながらも、私を側に置いていた事はなんとなく分かっていた。女の勘…かな。

でもこれですっきりした。


「ありがとう…綱吉」
「名前?」


懐に隠していた小さな銃を取り出し、男の心臓部に発砲。男が息絶えるのを確認した後、己のこめかみに銃口を当てる。


「名前何して!」
「ごめんね」
「そんな事必要ないんだ!だから、一緒にかえ」
「貴方が知っていた事だとしても、ずっと騙していた事実は消えない。それに自分が許せないんだ。我が儘ばかりでごめんなさい」


ねぇ、泣きたくなんてないからさ、今頬を伝ったこの雫には見て見ぬ振りをして下さい。どうかお願いします。


愛していたのは真実です


銃声ひとつ、この広い部屋には虚しく響く。





終曲、僕は引金を引いた。




「名前…」
「ボンゴレに帰ろう」
「帰ろうって…」
「なんで、なんでだよ!」
「名前!」





傷付いていく貴方なんて見たくなかったよ。でもね…。少しだけ幼さを残した優しい笑顔でずっといて欲しいから。もう祈る事すら叶わないとしても願い続けているからね?

さようなら、貴方を解放します





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