高嶺の花:見るだけで手にすることのできないもの、及びがたいもの。

彼はそういう人で私なんかが手の届くような人ではない。それを何を勘違いしたのか私は恋をしてしまった。ただ一度新入兵士達の入軍式の時、ただ遠くで姿を見ただけなのに。ただ一度だけの、それだけで私は強烈に惹かれたしまった。





そう所詮叶わない恋なのだ。ならば…これで終わりにしましょう。私がよく足を運ぶこのBARのカウンター席にジェイド・カーティス大佐がいる。これで最後にするんだ…。


「隣、いいかしら?」
「ええ、構いませんよ」


了承を得られたらしい。ゆっくりと隣の席に座った。こんなに近づけたのは初めて、嫌でも心拍数が上がる。もう、夢見る乙女って歳じゃないんだけどね。


「なぜ、私の隣に?」
「そうね、気分かしら。…なんてね、この席によく座るからつい癖でね。ごめんなさい迷惑だったかしら?」


いえそういう訳ではないのでと、彼は軽く笑いながら言った。ホッと一安心。しばらく静かにお酒をちびちびと飲んでいた。


「今日でもう終わりにするの」


ぽつりと出てきた言葉は小さくても彼に届いたのだろう。彼が隣で微かに動いたのが分かったから。


「無謀すぎる恋だった。私なんか視界にすら入れない…(だから、ね)」


貴女程綺麗な方が、ですか?だって!本当にそうなら諦めるなんてしないでしょう?貴族だったならまだ望みはあったかもしれないわね。


「お世辞言っても何も出ないわよ」


ただのお世辞だって分かってたけど、すごく嬉しくて。


「だから今夜はやけ酒!」
「飲み過ぎには気を付けて下さい」

「ありがとう」


私綺麗に笑えているかしら?





この花、咲いたとしても    
実ることはないのでしょう




貴方の前ではせめて綺麗な女でいたいな。




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