立ち止まるたびに
振り返るたびに
時間はただ急げと私を急かすのだ
幼なじみである私達が別れたあの日からもう3年。最強の名を欲しいままにしたポケモンバカは今や行方知れず。方やチャンピオンまで登り詰めたものの、その最強の幼なじみに敗れ今じゃあジムリーダーなんか務めるようになったもう一人のポケモンバカ。あ、ポケモンバカかしいないじゃん私の周りに。
「どうしてこんなに遠いかな」
私は幼なじみの背中ばかり追っていた。
それが悔しくて寂しくて悲しかった。心がどうしようもなくなった時にふと立ち止まってみる。けれどもそうしてる内に2人との距離がどんどん開いていくようで、焦ってつんのめるように走り出す。ただがむしゃらに駆け抜けた。独りぼっちが嫌だった、置いていかれるのが怖かった。
「お前こんな暗い部屋で何してんだよ」
「反省会」
グリーンによって部屋の電気が付けられ、机の上に置いてある鏡に写っている自分の顔を見た。
「ひでぇ顔」
「自分でも思った」
また変な事考えてただろ、なんて言いながらクシャリと私の頭を撫でる片方のポケモンバカ。
「グリーンには分かんないさ」
「…………」
自分という存在がなんだか惨めになり、何も悪くはないグリーンに当ってしまった。こんなに冷たく言うつもりはなかったのに。そしてまた自己嫌悪の無限ループ。
「ナマエはナマエだろ。他の奴なんて関係ない、ナマエのペースでやっていけばいい」
ふと気付く、私にとってグリーンという存在は何を言わないでも欲しい言葉をくれる人、いつも私の前を進んでいるが、偶に振り返っては立ち止まった私の手をなんだかんだと言いながらも引いてくれていたんだと。
「…ありがとう」
「おう」
貴方という存在が
私を救ってくれる
「今日はどうしたの?」
「暇だっからジムを閉めてきた」
「おい」
私の幼なじみは優しくて強くて、すごい人。ただちょっと、我が道を突っ走る傾向があるようです。ああ、そういえばレッドも我が道を行く奴だった…。