※花吐き病、ポメガバース、オメガバース、うさぎバース、DomSubユニバース、淫紋、ペイントバース
ポメさん改め諸伏がベッドの上に並べられたズボンまで履いた頃、扉をノックする音がした。俺が立ち上がるよりも早く、シャツを片手にそちらへ向かった諸伏が扉を開ける。
「遅いぞ、ゼロ」
「上も着ろよ、ヒロ」
聞き覚えのある声と渾名が耳に転がり込んできて、思わず入り口の方を見遣る。こちらに向かって「よ」と片手を上げた金髪の男に、俺はそっと頭を抱えた。因みに少し前まで耳がついていたところは小さく傷痕が残っている。
「公安の親玉(暫定)来ちゃった…」
「さすが、話が早いな」
「お前らが警察辞めるわけないって、同期は皆分かってるよ」
暗黙の了解というやつだ。どす、とソファに足を組んで座った降谷がふっと得意げに笑う。警視庁のデータベースから消えた諸伏景光並びに降谷零という名前は、彼らが存在しないとされる部署に入ったこと、または警察と名乗れない仕事をしていることの裏付けだった。
「ヒロ、もう大丈夫なのか?」
「あぁ、うん…多分メンタルの方、かな…今までこんなことなかったんだけど…」
しょぼん、と肩を落とす諸伏の頭にポメの耳が見えて、思わずそこに手を伸ばす。突如頭を撫でられた諸伏は「うわっ」と声を上げて、それでもされるがままになっている。それほど心に来ているということなのだろう。
「よしよし、公安はきっついよな…お前らの苦労、分かんなくてごめんな」
機動隊も危険で過酷だ。けれどそれだけ日の目を見たり感謝されることが多く、公安のように秘密裏に動いたり刑事課に目の敵にされることは少ない。滅私奉公のような彼らの業務は、俺達の理解の範疇からは逸脱している。俯いたままだった諸伏が顔を上げたので、それに従って手を離した。少し不服そうに俺に向いた諸伏の吊り目が俺を見止めてから、漏れ聞こえた「え」という声と共に丸く見開かれる。
「恐らくペイントバース、だな…ヒロの魂の色だよ」
「俺の…そっか……白いのか…」
訳知り顔の降谷が、そう微笑んだ。呆然と両手を見下ろした諸伏がうわごとのようにそう言って、くしゃりと歪んだ顔を両手で覆う。状況が飲み込めず二人を交互に見ると、降谷に天井を指差される。趣味の悪い鏡張りの天井を見上げると、髪を真っ白に染め上げて間抜け面をしている俺と目が合った。
「えっ、なにこれ」