短編
※花吐き病、ポメガバース、オメガバース、うさぎバース、DomSubユニバース、淫紋


途中からはポメさんに案内されて、安いラブホテルに辿り着いた。ちょっとした城のようなデザインを見上げながらなんでラブホ、と半ば呆然とする。人との接触もないまま部屋をポメさんに選んでもらって、それから選んだ個室に向かった。

がちゃん、と扉が閉まって料金がカウントされ始める。ごしごしと玄関先のマットに丁寧に足を擦りつけたポメさんが部屋に上がって行った。その後について行って、抱えた服をベッドの上に並べていると、とん、とふくらはぎあたりに何かがぶつかる。振り返ると、ポメさんが俺のふくらはぎに前足を乗せて後ろ足で立ち上がっていた。意図が分からずにまじまじと彼を見詰めてしまうと、じっとこちらを見つめ返してきた円な瞳が、こて、と首を傾げた。

「…お迎え、待たなくて良いんですか?」

構って人型に戻せということだろうと受け取った俺がそう尋ねると、またポメさんがうんうんと頷く。まぁ確かに先程の電話の相手もちょっと性格がキツそうだったし、進んで犬を構いそうではない。彼がそう言うのなら、と床に腰を下ろすと、ポメさんが俺の太腿に乗り上げてきた。その頭を撫でながら、自分の鞄から犬用の櫛を取り出す。

「こんなになるまで毎日頑張ってるんですね、すごいなぁ…でもちょっとくらいお休みしてくださいね」

俺はポメにならないから、どこまで頑張ったらこうなるのかは分からない。萩原はヒートを拗らせて、松田は二日酔いで、と言っていたから案外ポメ的敷居は低いのかもしれないけれど、個人差もあるだろう。元々ふわふわの毛を櫛で解いて、前足なんかもむにむにマッサージする。決して俺が肉球を触りたいわけではない。その甲斐あってか、何度か聞いたことのあるぽふん、という小爆発音。

「えっと、久し振り!」

人に戻ったポメさんの顔には見覚えがあった。それはそうだ、数年前まで志を同じくして警察学校で共に学んでいた仲間なのだから。呆気にとられた俺は、思わずぽかんと口を開けたまま首を傾げた。

「…??公安案件??」

すす、と目を逸らした諸伏が明らかに笑って誤魔化しながら立ち上がる。卒業と同時に連絡が取れなくなっていたから恐らく公安に配属されたのだろうとまことしやかに囁かれていた同期は、ベッドから下着をつまみ上げて足を通した。




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