短編
※花吐き病、ポメガバース、オメガバース、うさぎバース、DomSubユニバース、淫紋


職業柄腕っ節には自信がある。最近は治安も安定していると言い難い所があるから、帰り道は自主パトロールも兼ねて裏道を通ることが多かった。俺自身Subなのでもし揉め事なんかがあったら相手を見て動き方を考えるが、実際それで何度か犯罪を未然に防げた事もある。例えば。

「…警察です、保護させて頂いても?」

たまに起こりうるのが、こうやってポメに名刺を差し出す場面である。「ふすん…」と哀れっぽく鼻を鳴らした黒いポメラニアンの周りに散らばっているのは、男性もののカジュアルな服とギターケースだった。軽音サークルの大学生かバンドマンだろうかと推察。後ろ足の間に格納された尻尾を見遣ってから小さな頭を撫でた。比較対象がないから余りサイズ感が分からないが、多分ポメ原とポメ田の間くらいだと思われる。

すりすり、と俺の手に懐いてくるポメさんの傍らに散らばった服を集めていると、そのうちのどこかから音楽が聞こえた。携帯の着信音だと踏んで、音源のあたりを漁る。ズボンのポケットから取り出したスマートフォンをポメさんに差し出すと、その前足がたし、と液晶をタップして通話を開始した。

「もしもし?貴方、どこで油売ってるんです?」

「くぅん…」

少しきつい態度の電話の相手に、ポメさんが一つ鳴いた。これには相手も戸惑いを隠せなかったようなので、俺はポメさんに小さく手を振ってから自分の顔を指差した。小さな頭がこくこくと二つ上下に動いたので、失礼ながら横から口を挟ませて頂く。

「…こんばんは、警察の者です」

「え?」と気の抜けたような、返事とも言えない声が返ってきた。事情を説明しようと口を開いたところ、それよりも早くポメさんが液晶にお手をする。ビデオ通話になったようだから、恐らく向こうには画面一杯に警察官の名刺を咥えた毛玉が映っている事だろう。暫く間が空いて、深い溜め息の後に電話の相手が言う。

「…回収に行きます、その近くにホテルがありますよね?そこに入っていてください」

それだけ捲し立てられて、ぶつりと電話が切れる。本当に仲がいいのだろうか、と不安になりながらポメさんを見るとどこ吹く風といった様子だったので、そういう人なのだろうと納得した。

「来てくれるそうですよ、良かったですね」

そうポメさんに声を掛けながら荷物を回収する。「きゃん!」と鳴いたポメさんが、言われた通り近くのホテルに足を向けた俺の後を、短い足でついてきていた。





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