短編
※花吐き病、ポメガバース、オメガバース、うさぎバース、DomSubユニバース、淫紋


世界は随分混乱したが、各国の有名な学者達が手分けして爆速で研究しまくったらしい。案外早く騒ぎは落ち着いてきたようだった。まだ研究中の事例もあるけど、生活に支障の出やすい大きな変化から準順にラベリングされて、それに伴って薬なんかも開発されているところらしい。そんなこんなで。

「お前、ポメ田治せるか…?」

鍵付きになった仮眠室のカプセルベッドの戸を叩かれて外を見ると、そこに立っていたのは黒モフと制服を一緒くたに抱えた機動隊の先輩だった。起き抜けにそんなことを言われた訳だが大体の状況を把握して、けれど肝心なところが分からなくて困り果てる。

「えっと…田で終わる名字の知り合い結構いて…」

「松ラニアン」

「…がんばってみます」

松田かよ。ポメ田と松ラニアン因数分解したらポメラニアンと松田かよ。先輩は恐らく松田と仲のいい萩原を頼りにして来たんだろうが休憩はまだ。俺がポメ原の対応をしたことがあると知っているからお鉢が回ってきたのだろう。俺も松田と一応同期に当たるし。

「なにお前、疲れちゃったの?」

もふ、と本人の髪質と同じようなふわふわの毛を撫ぜると「がるる…」なんて小型犬から聞きたくない音がした。こわ。よく見れば萩原がポメった時より一回り小さいので結構本人の身体的特徴も反映されるらしい。俺は足元に置いていた荷物をがさごそと漁って、おつまみ用のジャーキーを取り出した。聞いたところによるとどうせ人間に戻るから人間用で良いらしい。

ちら、とそれを見せた途端、松田のもこもこの尻尾がぶん、と左右に揺れた。真空パックを開けて顔の前まで持っていくと、ぱか、と大人しく口が開かれたので差し込んでやる。もちゃもちゃ咀嚼している松田を好き勝手わしゃわしゃかまっていると、ぽふん、と小爆発が起こった。

「もう一個ねぇ?」

「三個やるからポッケ入れとけ」

「貰ってやる」と手を出した全裸グラサンの松田の手のひらにジャーキーを三つ置いたところで仮眠室の扉が開け放たれた。思わず松田とそちらを向くと、口元を手で隠した萩原が立っている。

「どっちにジェラればいい…?」

深刻そうな声色に思わず笑ってしまった。知るか。


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