※花吐き病、ポメガバース、オメガバース、うさぎバース、DomSubユニバース、淫紋
「そんで?誰が好きなの?」
前の日に調達しておいた菓子パンの袋を畳みながら、萩原がそう尋ねてくる。突然の思いもよらない質問に思わず身体に力が入った。そりゃそうだ、ゴミ箱に捨てられた小さいピンクっぽい花弁を萩原も見ただろうし、状況を整理したときに自ら花吐き病に罹患しているらしいことを伝えた。全然思いもよらなくなかったわ。
「いや…それはさ…」
はは、と笑いながら視線を斜め下に逸らす。だって、今正直に「萩原が好き」って言ってもちょっと嘘臭くない?覚えてないとはいえ、合意だったかどうかもわからない状態でうなじを噛んだ責任からそう言っている、と思われてもおかしくなさそうである。
いや、でも警察学校時代からコミュ力が高い萩原は超気が利くし、ちょっと前髪切ったとかでも目敏く発見してくるタイプだ。真剣に告白すれば嘘じゃないと分かってくれるかもしれない。そう考え込んでいる俺に少し表情を曇らせた萩原は、ふと目を伏せて、それから俺の瞳の奥を貫くような視線を寄越した。
「…悪い、"言って"?」
じ、とまっすぐな視線と力を持った言葉が俺の脳を痺れさせる。そだ、はぎわらがきいてんだからこたえないと。頭の中で、萩原の声が反響して、請われるままに口を開いた。
「あ、おれ…はぎ、わら、が、すき…」
きょと、と萩原が垂れた目を丸くした。それから顔を綻ばせて俺の頭を撫でる。
「うん、俺もすき」
よくできました。そんな柔らかな声色が、じわりと胸に染み渡った。それから俺がポメ原にしたようにわしゃわしゃと頭を掻き乱されて、大人しくされるがままになる。けれど、萩原が賞賛と一緒にくれた言葉の意味を理解して、はっと我にかえった。
「…えっ!?それマジ、えっ、オエッ、あっちょっ、え、ギャァアア!!耳ィ!?」
「あっはっは!!ヤベェ〜!!」
ぐらぐら揺れる動きに促進されて喉の奥から競り上がってきた花弁が、喋ろうとした拍子に口から溢れる。その色、銀色に驚くと、今度は頭の上からころりとテーブルに黒い毛玉が二つ落ちた。うさ耳だ。てんてこ舞いな俺に萩原がゲラゲラ笑っている。ちょっとあの、両思いって分かっただけで忙しなさ過ぎんか?