短編
※花吐き病、ポメガバース、オメガバース、うさぎバース、淫紋

「マジでどういう…さっきからこれしか言ってねぇな…」

ぼりぼりと野菜スティックを咀嚼しながら頭のもふもふを弄る。とりあえず落ち着いてテレビを点けると、どうやら外でも同じような混乱が起こっているらしい。

俺達のようなケース以外にも突如長時間睡眠を始めた人や、猫耳が生えた人、全身から花を咲かせ始めた人など、もう何でもありである。招集が出るかと職場に連絡したところ、要約すると「お前らも異常が出たなら来るな」と言われてしまった。いいんすか。

「そうさなぁ」と何やら考えているらしい萩原。こいつはこいつで「花咲き病」とか「おふとんバース」とか俺の知らんワードを出していたので状況が整理出来てきた。要するにとんでもないことが起こっているということだ。うそ全然整理できてない超とっ散らかってる。

けほ、と萩原が軽く咳をした。そういや昨日の夜、俺は飲み過ぎて記憶が吹っ飛んでいて、萩原は俺にうなじを噛まれてからの記憶がないとのこと。まぁ多分明らかに何らかのイベント()はあったはずなので、今俺はこいつには逆らえないのである。立ち上がって、台所に向かって、冷蔵庫から水を取り出して萩原に渡した。

「お、さんきゅ」

にこ、と笑った萩原に「ん」と頭を下げる。下げてから、自分の行動のおかしさに気付いた。椅子に座った萩原の手が届く位置、つまり撫でやすい位置まで屈んだ俺。はっと息を呑んだ俺に、目を丸くした萩原が徐々ににやにやと顔を緩め始めた。

「ん?ん〜?何これ〜」

「や、やめろぉ…」

髪を撫で付けるように頭を滑る手に、じわじわと胸の奥が満たされていくような心地がする。もしかしてこれはドムサブユニバースとかいうあれでは、でも俺萩原に命令された訳じゃ無いんだけど。ぐるぐる考えていると、萩原のもう片方の手がガバッと俺のシャツを下から捲り上げた。

「そういやこれもあったっけな」

そんな言葉に、俺も自分の下腹に目を向ける。覗き込んだ先、俺の臍の下に、ハート型の、刺青のようなもの。

「き、キャアアアアア!!?」

突如現れた淫紋に絶叫する俺に、萩原がケラケラと笑い声を上げた。笑い事じゃねぇんだよ。いい加減にしろ。






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