夕焼けのキューティボーイ


緑谷くんとお茶子ちゃんと分かれて、飯田くんと手を繋きながら町中を歩く。顔は見れない。なんだか、恥ずかしくて。付き合ったばかりの頃は、手を繋ぐどころか一緒にこうして帰ることすらできなかったけど、クラスの男子のおかげでそうすることができた。どうやら、「普通のカップルはそういうことすんの!」と、入れ知恵されたらしい。グッジョブ。飯田くんの手はがっしりしていて、触れているだけで安心する。温かい熱が手から伝わって、全身を隈無く駆け巡った。

今日の授業の話とか、緑谷くんたちの話とか、他愛のない話をしているだけで照れてしまうのは飯田くんだけだ。飯田くんも私と一緒だったらいいなぁ。

「じゃあ、私はここで」

楽しかった時間も終わってしまうけど、明日も会えるから問題ない。曲がり角で手を離そうとすると、逆に手を引かれてしまった。くんっと体が前に傾き、飯田くんが私の頬を取って、顔を、近づけた。唇と唇が触れ合って、少しして離れた。

「ごめん。我慢できなかった」

飯田くんが真っ赤な顔で頭を下げた。もっと夜景が綺麗な場所でとか、そういうところがいいんじゃないかと思っていたらしい。真面目な飯田くんが、罰が悪そうにしているのが、可愛くって仕方無い。

「ぜ、全然、いいよ」
「本当か…?」

じゃあ、もう1回していいか。と、そんな風に聞かれて、ダメって言う人っているのかな。少なくとも私は言えるわけないな。