だって所詮低俗な生物ですもの | ナノ

もう一度って何度でも愛し合う


周りの元A組メンツ(爆豪を除く)はにやにやと、マスコミのカメラから私たちを遮るようにぐるりと囲んでいた。本当は別のところに行こうとしたのだが、私が元ヒーローで元A組で、しかも2年前に轟くんと破局報道があったのだから、マスコミが食いつかないわけがない。公開処刑という言葉が頭にちらついたが、そんなことに構ってはいられなかった。

「轟くん…!」

駆け寄って背中に手を回しても突き放したりなんてしない。温かい。懐かしい。ああ、もう、好き。轟くんも私の頭を撫でてそれに答えた。

「とどろ、き、くん…」

ぽろぽろと涙が溢れて止まらない。好き、好きだよ、ずっと会いたかった。声が聞きたかった。不安でたまらなかった。轟くんの負担になるかもしれないとわかってても、それでも手放せないくらいすごく好き。

でもその言葉を口にすると、また轟くんに迷惑がかかる。言えない。本当は言いたい。言葉の代わりに涙が止めどなく流れ落ちた。

「みょうじ、俺、ずっと考えてたことがあるんだ」
「……なに?」
「別れてほしい」

一瞬、何もかも止まったような気がした。

肩を掴んで、轟くんの腕の中から外される。頭が必死に拒絶しているのに、その行為が聞き間違えでないことを証明していて。

「………何で、なんで、そんなこと言うの…。私のこと……もう、好きじゃ…ないの……?」

轟くんの顔が見れない。足元ばかり見てしまう。

「あの熱愛報道って、本当のことだったの?」

久しぶりに会えたのにこんなのってないよ。

「私は…もう他の人に何を言われても、何をされても、轟くんだけが好き。大好き。ずっと、……ずっと愛してるよ…」

なのに何で、どうしてそんなこと言うの?

ぐらりと視界が曇ったとき、轟くんが私の顔を覗き込んで言った。

「俺も、なまえが好きだ。一時はお前が幸せならと、爆豪に譲ろうかとも思ったが…できなかった。なまえを幸せにするのは俺だ。だから、俺ともう一度付き合ってほしい」
「………とど、」
「ゼロに戻って、離れた距離を埋めよう。そしたら俺と結婚してくれ」
「轟くん………!」

久しぶりに名前で呼んでくれたこと、轟くんも私を好きでいてくれていることが何よりも嬉しくて、声を上げて泣いた。轟くんは今度こそ私の背中に手を回して、力強く抱き締めてくれた。笑っているようだった。

お茶子たちが「おめでとう!」と拍手をしてくれる。見ていた人達は呆気に取られていて、報道陣もただ黙ってカメラを回していた。側で切島や瀬呂、緑谷、上鳴が 爆豪を必死で押さえ付けてくれていた。

「……ふっざけんなァ、半分野郎ぉぉぉ!!!」

間に入れない代わりにと、ムードを壊すような怒声を爆豪が上げた。