爆豪くんと黙々と歩き続ける。会話がないのが本当に辛い。爆豪くんは何が目的で私を送るなんて言ったのだろうか。まさか、ヒューマが言った“合コン”を真に受けたのだろうか。ま、まっさかあ!爆豪くんが、私をお持ち帰りとか……こ、高校生だし!釣り合わないし!ないない!ない!!
「そ、そういえば爆豪くん!ここ何できるか知ってる?」
「“ここ”?」
「ほら、ここずっと工事してるじゃん!」
何か話題、話題と思い付いたのが、駅前の工事現場だった。いつから始まったのかは正確に知らないけど、大きい建物だし遊べるところがいい。
爆豪くんが立ち止まったので、自然に背中にぶつかった。
「爆豪くん?」
見上げると、その横顔はとても険しくて。怒っているようだった。忌々しげにとでも言おうか、ただならぬ雰囲気で怖かった。
「遊べるところだったら、みんなで行こうよ」
「………ああ」
「爆豪くんは何が好きなの?カラオケは好きじゃないみたいだし……」
「んなの聞いてどうすんだよ」
「え。えーっと、爆豪くんのことあんまりよく知らないから、その、」
「だから、」
今度は私に向き合った。さっきまで優しかったのに、語尾が強めだ。
「知ってどうすんだよ」
言ってることとやってることが、矛盾してると思う。そんなことを言うなら、わざわざ送ってくれなくていい。クラスも違うし、そんなに仲がいいわけでもないんだから、あのまま帰って素知らぬ顔で廊下を通りすぎたっていい。何だか私が言い寄ってフラれているようで、イライラした。理不尽じゃないか。
「〜〜わっかんないけど!ちょっとは、会話しようよ爆豪くん!別に私一人で帰れるし!ばいばい!」
パシッと手を払って、爆豪くんを抜かして改札口へ向かった。嫌われたっていい。そもそも気になってもいないし!どう思われたって別にいいし!
定期券を取り出して改札を通ると、後ろからバンッと叩きつける音が聞こえた。
「勝手に行ってんじゃねえよボケ!!」
「送ってくれなくていいって言ったじゃん!」
「うるせえ!!いいか!?俺はうだうだ悩むのは嫌いだ!あのときああしてりゃよかった、だの言いたかねえ!思いたくもねえ!だから、もうそれはやめだ!!こうなりゃ、てめえが違って ようと関係ねえ!金輪際、俺の視界から消えんじゃねえぞ!」
「なっ………」
ビシィ!と指を差されて、しかもこんな人通りの多い駅のど真ん中で、大声で!目立つ!それに爆豪くん有名人みたいだし、周りの人も「雄英だ」ってなってる!
何で昨日今日で知り合った男子にこんなこと言われなきゃならないの!?
「ば、爆豪くんって、一体何なの?」
「さあな。死ぬ気で考えりゃ思い出すんじゃねーか、なまえ」
「何で名前……」
「オラ、電車来たぞ」
どうして私を名前で呼ぶのかも、行き先の駅を知っているのかも、何から何まで聞きたかったけど、爆豪くんが何故かやたら吹っ切れたような清々しい顔をしていたから聞けなかった。