親指から小指までの距離感

2年生になると、学校生活は更に忙しくなった。なまえを想う暇もなく日々が過ぎるのは、爆豪にとって助かっていたのかもしれない。けれど、2度目の雄英体育祭を迎えて思う。なまえはもしかしたらこの放送を見ていて、爆豪の姿を確認できるけれど、爆豪の思うなまえは中学で止まったまま更新されない。髪も伸びているかもしれないし、はたまた短くなっているかもしれない。それに気づくと、心にすきま風が吹いたような感じがした。

「聞いて!俺、彼女できた!!」
「え、マジ!?」
「でも今まで以上にハードだよ授業。大丈夫なわけ?」
「なんとかなるっしょ!」

言いはしないが、なんとかはならない、と心の中で突っ込んだ。なんとかなってたら今頃こんな思いはしていない。初めて他人が羨ましいと感じた。手を繋いだとかそういう話を楽しそうにする上鳴をギッと睨みあげる。

(俺だってやりてぇんだよ、クソが…!!)

いや、手を繋ぐだけでは済まない。抱き締めたいし、撫でたいし、キスもしたいし、それ以上だって。でも、実際そうは思えど、一目会えたらいいのだ。なまえも爆豪もお互いを認識して会えたらそれでいい。もうどうしてだとか理由も聞かないし、ふざけんなと怒鳴ることもしないから、どうか、どうか。

なまえは今頃どうしているのか。爆豪と別れたと思って、他に男ができただろうか。そう考えるだけで相手を殺したくなってきた。

「イかれてんな」
「どうしたんだ、爆豪くん」
「今更だろ」
「てめぇ醤油顔表出ろ!!!」

1年経ってもまだ好きだ。ずっと好きだ。


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