物間寧人



物間くんは本当によくわからないなぁ。4月当初のイメージから、段々かけ離れてきた。初対面では、物静かで賢そうなインテリのイメージだったんだけど、煽ってくるわ割と話が長いわ、合宿では1人だけ補習だったり、最終的によくわからない人という位置付けになってしまった。大胆不敵なところはいいと思うよ。ただ、相手逆上させて大変なことになりそうだとは思うけど。

「僕からしたら、みょうじさんの方がわけわかんないけどね」
「………いきなりどったの」
「いやぁ、そんな虫も殺せないような可愛い顔してさ、問答無用に相手殴れるのがギャップと言っていいのかわからなくてね」
「虫も殺せないような女の子がヒーローなんて役職目指すわけないじゃん」

敢えて"可愛い"という部分には触れない。からかわないで!と言ったところで、物間くんはやめてくれないだろうし、不敵に笑うに決まっている。その度にドキドキするのも無駄だ。最早心労になる。早くこういうこと言うのに飽きてくれないかな。

「多分ギャップだと思うからさ、A組の奴等でも釣らない?」
「嫌がらせに加担する気は無いからね?」
「あ、でもダメだ。あいつら単純だから、本気にするやつが出てくるな……」
「聞いてる?」

なんだ?物間くんは構ってくんなのかな?嫌がらせは歪んだ愛情表現なのかな?物間くんのA組に対する印象もなかなかだが、私の物間くんに対する印象もなかなかのものだった。

「みょうじさんが可愛いから、ついからかっちゃうんだよ」

出たよ、"可愛い"。それ言えばいいと思ってるところあるでしょ。目を逸らしたら負けとでも言うかのように、真っ直ぐ物間くんが私の目を見ている。あまりにも真っ直ぐなものだから、恥ずかしくなって目線を逸らせば、物間くんがしてやったり顔になった。負けた。

「ドキドキした?」
「〜〜っ、し、してない!」
「そう。僕はしたんだけどなぁ」

惜しいね、と笑う物間くんは、本当に何が狙いなのかわからない。わからない人。それに、私の心臓に悪い人。