口田甲司




“個性“と言えば、お茶子ちゃんや轟くんと言った能力系が浮かび上がるけど、勿論それだけではない。瀬呂くんや障子くんのように、体に変化がある個性もある。彼もきっとそうなのだろう。三奈ちゃんの肌がピンクなように、彼の肌は橙色だ。あの鋭い頭は何なのだろう。髪のようなビラビラは、果たして硬いものなのだろうか、柔らかいものだろうか。そして彼の外見に現れている“個性“は何なのか。

口田甲司くんについて、私の疑問は尽きそうにない。

「でもとりあえず、今は、口田くんの声が聞きたい!何かしゃべって!」
「止めろみょうじ。口田が困っているだろう」

常闇くんに嗜められた。しかし、私は諦めない!口田くんの声を、入学して以来1度も聞いたことがないのだ。これは気になる。

「じゃあ会話しよう。こんにちは口田くん。昨日ご飯何食べた?」

口田くんは困った顔をするばかりで、何もしゃべってくれない。質問には答えなきゃ。そんなんじゃ、ヒーローやってけないよ? 上から物を言ってみても、薄いリアクションしか返ってこない。おかしい。響香ちゃんは「意外とよくしゃべるよ、あいつ」って言ってたのに。私が響香ちゃんみたいに可愛くないからかな。

「………私と話すの嫌?」
「!」

首を思いきり横に振った。嫌ではないらしい。よかった。

「ごめんね、いきなり。でもすごく気になったの。卒業するまでには、私とお話ししようね」

さすがに、これからも仲良くするクラスメイトに無理強いはしない。授業なんかで話す機会は出てくるのだから、焦らなくてもいいのだ。私がそう言うと、口田くんが困った顔から笑顔に変わった。そう、今はこれだけでいい。