切島鋭児郎



「みょうじっ!」

登校中、後ろから声を掛けられて振り向くと、切島くんだった。私にとって、男子の中で1番話しやすい人だ。

「同じ電車だったんだな。一緒に行こうぜ!」
「うん!」

今日の基礎学は、前みたいにヒーロー名とかだったらいいのにとか、戦闘訓練やりてーとか、合宿楽しみだねとかそんな話をしながら歩く。

「みょうじは夏休み予定あんの?」
「んー、中学の友達と遊ぶ約束はあるけど……正直、課題の心配をしてて………」
「ああ……。でも、テスト良かったじゃん。もし、終わらねえようだったら勉強会しようぜ。俺だけじゃ元も子もないけど」
「心強いなぁ」

ここで話題は夏休みの話へ。みんなで花火とかしたいねえ、と言ったら、何人か集めてみるかと切島くんが同意してくれた。切島くんが掛け合ったら、大体みんな来てくれるだろう。何人かはわからないけど。あ、だめかなぁ。飯田くん辺りが「保護者無しで火遊びなど!」って言って怒るかもしれない。

「プールとかね」
「プールはなぁ………峰田と上鳴がいっからなぁ………」

頭を抱える切島くんに思わず苦笑してしまう。上鳴くんはまぁ、だとしても峰田くんが暴走しそう。合宿の話が出たときでさえ、お風呂だ行水だと煩かったのに。

「……あ、あのさぁ」
「ん?」
「夏休み中、1回でいいから会ってくんね?」
「いいよ!みんな誘っとくね!」
「いや、そうじゃなくて」

切島くんの方を見ると、両手で目から下を覆っていた。ちらりと横目でこちらを見て言った。

「ふ、二人で………」
「えっ」

小さく聞き返すと、切島くんの顔がみるみる赤くなった。

「悪い!!今の忘れてくれ!!あっそういえば課題やんの忘れてたわ先に行くな!!!」
「あっ、ちょ、切島くん!」

多分体力テストのときよりも、物凄い早さで走っていってしまった。まるで光だ。1人その場に残され、さっき切島くんが言ったことを反復すると、足が止まって、切島くんのように顔が熱くなった。

朝からドキドキさせないで、もう!