Heralist



バカ騒ぎとまではいかないけれど、それなりに会話が聞こえてくる授業中。前の席の水谷はいつものように後ろ、つまりは私の方を向く。


「今日の服、いつもと雰囲気違うよな」
「あ、わかる?今日は放課後買い物に行くからオシャレしたの」
「なになに、もしかしてデートとか?」
「そーなのー。お兄ちゃんとだけど」


なんだ、デートじゃないじゃん。そう言ってケラケラ笑う水谷。そんな水谷に対して、男と女が出掛けたらデートなんですー、と口を尖らせる私。どうせ私は地味で超がつくほど普通な女子だよ。派手で人気があるアンタとは違ってモテないんだよチクショー、なんて続けて言ってみる。


「え、何。みょうじってモテたいと思ってんの?」
「ソレどういう意味さ」
「なんか恋愛とか興味なさそうって意味ー」
「いつか白馬の王子様が来てくれると信じてるから」
「うわー。馬が好きなんだ」
「違います」


ふざけた会話。あまりにも暇な授業に飽きると、私達はこうやって意味の無い会話をする。なんだかんだで結構楽しいんだな、これが。
そもそも相手が男子っていうのがいい。女子みたいに余計な気遣いいらないし、全部本音で話しても相手は気にしない。逆に全部冗談だとしても同じだ。つまりはかなり気楽という意味。


「そういえば野球部って雨の日とか何してんの?まさか雨の中練習なんてことは…」
「それはないよー。まぁミーティングとか筋トレかなぁ」
「へぇー。雨の日ぐらい休みでもいいのに大変だね」
「結構楽しんでるからそうでもないよ。今日はオフだし」


丁度その時、私の携帯がピカピカと光った。流石に授業中に鳴らすようなことはしない。だけどメールが気になるからゴメン先生、ちょっと携帯いじるよ。心の中で謝罪を入れて、カチリと携帯を開く。メールはお兄ちゃんからで、なんと今日の買い物は中止という連絡だ。どうせまた彼女に呼び出されたのだろう。


「あーあ、せっかく良い服着てきたのに…」
「もしかして兄ちゃんに用事でも入ったとか?」


当たり。そう言って携帯をしまう。まぁ予想はしていた事だ。しょうがないから今日は諦めよう。そう結論に達すると、少しだけ書かれた黒板をノートに写す。
あのさ…。また水谷が声をかけてきたから視線はノートのまま、何?と返す。


「オレが一緒に買い物行こうか?」
「いーよ別に。せっかく休みなんだから帰って寝なよ」
「帰ったって暇だからさー、な?」
「うーん…まぁ水谷がいいなら。悪いね、付き合わせて」
「いーの。行けるの嬉しいし」
「へぇ、嬉しいんだ?」


買いたい物でもあるの?そう聞くと水谷はにへらと力の抜けたような笑顔を浮かべた。だって…。口を開いた水谷。理由は少し気になったから私も顔を上げる。
野球部関係の買い物か何かだろう。そう思っていたのに、私はその言葉を聞いて呆気にとられることになった。


「男と女が出掛けたらデートなんでしょ?」
「へ?…あっ、え?」
「水谷くんはみょうじさんのことを好きになっちゃったようです」


それはあまりにも自然な告白だった。







(よかったら付き合って欲しいなー)
(ちょっ…待って、ちょっと待って!)


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