本当の家族
悶々とした想いを抱え、兄の病室に入る。
兄は私を一瞬見て驚いた後、険しい眼で私を睨む。
「・・・・何しにきたの?」
『・・・お母さんから聞いて・・・・。大丈夫かなって・・・。』
「・・・・そう。それで?・・・大丈夫に見えるかい?」
そう私を睨みながら自嘲気味にいう兄。
まるで世の中で自分が一番不幸ですと言わんばかりの態度に、私は少しずつ怒りがわいてくる。
「・・・・・・・テニスだけが・・・・俺の生き甲斐なんだ・・・・・・それを断たれた俺が、大丈夫そうに見えるかい?・・・」
『・・・・でも・・・手術すればできるかも知れないって・・・』
「それも確実じゃないっ!・・・手術したって、なおる確率は2割だっ・・・・・」
『・・・・・・でも、2割ある・・・・』
「・・・・・手術の成功率も五分五分だよ・・・2割に俺の命をかけろって言うのかい?・・・・・・だいたい、途中でスケートを投げ出したなまえに何が分かるんだっ!!俺の気持なんて分かるはずがないっ!!・・・気分が悪い。もう帰ってくれ。」
『・・・・・・弱虫・・・。』
そう呟いた私を勢いよく睨みつける兄に私は続ける。
「・・・・テニスが全てだって言うのに、自分の命はかけれないんだ?・・・・・半分失敗するかもしれないけど、半分成功するかもしれないじゃん。・・・・テニスが出来る確率だって2割もある・・・。その2割は自分で3割にも4割にも出来るかもしれないじゃん。・・・そうやって腐って自分の運命を呪っているより、自分からテニスを奪おうとしてる病気と闘おうとは思わないの?・・・・・テニス部の皆が可哀想だよ・・・みんな精くんのこと思って、精くんが帰ってくるのを信じて毎日頑張ってる。・・・・でも精くんは、投げ出すんだね・・・。私のこと言えないじゃん。』
「・・・・言ってくれるじゃないか・・・・。・・・じゃあなまえは何でスケートを途中で投げ出したんだい?・・・・・それこそ、沙耶が可哀想だとは思わなかったのかい?・・・・・・・父さんと母さんのことは考えなかったのかい?・・・・・・おまけに今では赤也と楽しくやっているそうじゃないか。・・・・・沙耶の気持は知っていたんだろう・・・・?
・・・・それとも・・・・本当の家族じゃないから、どうでも良いのかい?」
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